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12月09日-03号

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  1. 熊本県議会 2022-12-09
    12月09日-03号


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    令和4年12月 定例会               第 3 号              (12月9日)  令和4年   熊本県議会12月定例会会議録     第3号令和4年12月9日(金曜日)  ―――――――――――――――――   議事日程 第3号  令和4年12月9日(金曜日)午前10時開議 第1 一般質問(議案に対する質疑並びに県の一般事務について)  ―――――――――――――――――本日の会議に付した事件 日程第1 一般質問(議案に対する質疑並びに県の一般事務について)    ――――――○――――――出席議員氏名(48人)            堤   泰 之 君            前 田 敬 介 君            城 戸   淳 君            本 田 雄 三 君            南 部 隼 平 君            坂 梨 剛 昭 君            荒 川 知 章 君            西 村 尚 武 君            島 田   稔 君            山 本 伸 裕 君            岩 田 智 子 君            池 永 幸 生 君            竹 﨑 和 虎 君            吉 田 孝 平 君            中 村 亮 彦 君            大 平 雄 一 君            髙 島 和 男 君            末 松 直 洋 君            松 村 秀 逸 君            岩 本 浩 治 君            西 山 宗 孝 君            河 津 修 司 君            濱 田 大 造 君            前 田 憲 秀 君            磯 田   毅 君            西   聖 一 君            楠 本 千 秋 君            橋 口 海 平 君            緒 方 勇 二 君            増 永 慎一郎 君            髙 木 健 次 君            髙 野 洋 介 君            内 野 幸 喜 君            山 口   裕 君            渕 上 陽 一 君            田 代 国 広 君            井 手 順 雄 君            城 下 広 作 君            鎌 田   聡 君            坂 田 孝 志 君            溝 口 幸 治 君            小早川 宗 弘 君            池 田 和 貴 君            吉 永 和 世 君            松 田 三 郎 君            藤 川 隆 夫 君            岩 下 栄 一 君            前 川   收 君欠席議員氏名(なし)  ―――――――――――――――――説明のため出席した者の職氏名     知事     蒲 島 郁 夫 君     副知事    田 嶋   徹 君     副知事    木 村   敬 君     知事公室長  小 牧 裕 明 君     総務部長   平 井 宏 英 君     企画振興部長 高 橋 太 朗 君     理    事 水 谷 孝 司 君     理    事 小金丸   健 君     健康福祉部長 沼 川 敦 彦 君     環境生活部長 小 原 雅 之 君     商工労働部長 三 輪 孝 之 君     観光戦略部長 原 山 明 博 君     農林水産部長 竹 内 信 義 君     土木部長   亀 崎 直 隆 君     会計管理者  野 尾 晴一朗 君     企業局長   竹 田 尚 史 君     病院事業            渡 辺 克 淑 君     管理者     教育長    白 石 伸 一 君     警察本部長  山 口 寛 峰 君     人事委員会            西 尾 浩 明 君     事務局長     監査委員   藤 井 一 恵 君  ―――――――――――――――――事務局職員出席者     事務局長   手 島 伸 介     事務局次長            村 田 竜 二     兼総務課長     議事課長   富 田 博 英     審議員兼            濱 田 浩 史     議事課長補佐    ――――――○――――――  午前10時開議 ○副議長(髙野洋介君) おはようございます。 これより本日の会議を開きます。    ――――――○―――――― △日程第1 一般質問 ○副議長(髙野洋介君) 日程に従いまして、日程第1、昨日に引き続き一般質問を行います。 山本伸裕君。  〔山本伸裕君登壇〕(拍手) ◆(山本伸裕君) おはようございます。熊本市第一選挙区・山本伸裕です。私は、日本共産党を代表して、一般質問を行います。 まず、統一協会に対する県と県教育委員会の対応についてお尋ねします。 統一協会は、これまで、反社会的な活動を組織的に行い、人権侵害や家庭崩壊など、深刻な被害を生み出してきました。多くの信者が統一協会であることを知らないまま勧誘され、先祖の因縁話で不安をかき立てられ、教義が植え付けられてきました。サタンに奪われたお金を神様の元に返さないといけないと言われて、多額の財産を献金させられ、教祖が定めた相手と結婚させられ、新たな被害者を生み出す伝道活動に従事させられる。脱会すると地獄に落ちると教え込まれ、心を支配され、憲法で保障された信教の自由が侵害されてきました。 このような統一協会の被害は、過去の話ではなく、今日もなお発生し続けています。 スクリーンを御覧ください。(資料を示す) これは、日本弁護士連合会がこのほど取りまとめた霊感商法の被害に関する法律相談について、今年の9月5日から10月24日までの期間にかかってきた受付件数を都道府県ごとに表したものであります。熊本県は、御覧のとおり、西日本では非常に高い件数となっており、その大多数が統一協会による内容のものとなっています。 今なお、統一協会という反社会的なカルト集団が、なぜ今日に至るまで生き延びてきたのか。それは、名称変更や様々な違う名称の組織をつくり、正体を隠して活動してきたからであり、そしてまた、政治家や行政への接近、癒着を深め、様々なイベントや講演会を議員とともに行ったり、あるいは名義後援という形で県や市町村からお墨つきをもらった活動を進めてきたからにほかなりません。 統一協会が深く関与していた実態を認識していた、いなかったにかかわらず、結果として彼らの活動を後押しするような形にしてしまっていたことを、関係があった議員や後援してきた行政の側は強く自覚し、反省し、改めなければならないことは当然であると私は思います。 日本共産党熊本県委員会は、県内の統一協会による活動と被害の実態を調査し、根絶させるために、対策委員会を立ち上げて活動してまいりました。その結果、次々と深刻な実態が明らかになってきております。その象徴的な問題が、統一協会関連行事であるピースロードの開催に、国会議員や県議らが実行委員として多数参加する下で、県や自治体が名義後援を行っていたという問題、さらには統一協会幹部が参加したり、あるいは関連団体が主催したりして行う家庭教育支援関連の講演会を県教育委員会名義後援してきた事実などであります。 明らかになった事実を基に、私たちは、統一協会関連イベント名義後援してきた熊本県及び県教育委員会に対し、後援の取消しと今後統一協会との関係を断ち切ることを求める申入れを行ってきました。 県は、ピースロード名義後援を取り消しました。そして、県も教育委員会も、今後関連団体の後援は行わないということを明言しました。 こうした判断は、当然で、妥当なことでありますが、この際、3点お尋ねしたいと思います。 第1に、後援を取り消された理由についてであります。 知事も教育長も、社会的に問題が指摘されている団体ということが後援を取り消す理由とされています。どこか人ごとのように述べておられるような印象であります。憲法違反の反社会的行動を組織的に継続して正体を隠して行ってきた団体であるという認識を県はお持ちなのでしょうか。もし、そのような反社会的な集団であるという理解をされているのであれば、はっきりと県としてそうおっしゃるべきであり、だからこそ関係を断ち切る確固たる決意を表明すべきであります。統一協会系の組織に対する御認識と県の立場をお尋ねします。 第2に、熊本県が統一協会との関連が指摘されている団体の一つとして名前を挙げた県平和大使協議会の方が、関連団体ではないとして熊本県に抗議をしたということが報道されています。申入れをされた同協議会の事務局長さんは、一般社団法人熊本ピュアフォーラムの役員も務めておられますが、10月6日付熊日報道によると、御本人が取材に答え、所属する各組織が旧統一協会関連団体という認識はない、霊感商法や多額献金の話については、少なくとも県内での被害は聞いたことがないなどとお話しされています。 詳細を申し上げる時間はありませんが、私たちは、平和大使協議会及び熊本ピュアフォーラム統一協会と深い関連がある実態をつかんでおりますし、全国霊感商法対策弁護士連絡会が発表した関連団体リストにも、熊本ピュアフォーラム平和大使協議会が明記されています。 改めて、熊本ピュアフォーラム及び県平和大使協議会統一協会関連団体であるという御認識に変わりはないかどうか、お尋ねします。 第3に、過去に行ってきた名義後援の問題であります。 後援してきたことが誤りであったということはお認めになりますか。お認めになるのであれば、既に他県でも決断されたところがございますが、過去に遡って後援を取り消すということをやるべきではありませんか。 以上、知事にお尋ねいたしますとともに、第1点目と第3点目に関しては教育長にも御答弁を願います。  〔知事蒲島郁夫君登壇〕 ◎知事(蒲島郁夫君) まず、1点目の旧統一教会系組織に対する認識と県の立場についてお答えします。 旧統一教会をめぐっては、信者からの多額の献金や霊感商法などに関して、報道等を通じて社会的に問題が指摘されています。 そのため、県民の不安や懸念が増大している状況を踏まえ、関連団体の行事への名義後援を県として明確に取り消しいたしました。 旧統一教会については、現在、国において、宗教法人法に基づく質問権を行使し、組織運営の実態や財産等に関する調査が行われています。 県としては、この調査結果など、今後の推移を注視してまいります。 次に、2点目の一般社団法人熊本ピュアフォーラム及び県平和大使協議会に対する認識についてお答えします。 県において、旧統一教会の関連団体を定義することは困難ですが、報道等による情報を通じて、例えば、代表者が旧統一教会の幹部である団体や組織の沿革などから旧統一教会との関係性が確認できる団体を想定しています。 両団体については、それらの点を踏まえ、関係性が確認できる団体であると認識しています。 最後に、3点目の過去に遡っての名義後援の取消しについてお答えします。 名義後援を行った際に、県に提出された書類等からは、主催者団体と旧統一教会の関係性を確認することはできませんでした。当時は、現在のように社会的に問題が指摘されておらず、当時の判断自体が誤りであったとは考えていません。 また、既に終了したイベント等への名義後援を取り消しても、後援した事実が取り消されるものではなく、直接的な効果は発生しないため、過去に遡って名義後援を取り消すことは考えていません。 県としては、今後、社会的に問題が指摘される団体が関係するイベント等への名義後援は行わないように徹底し、名義後援を行う際は、可能な限り情報収集に努め、十分に精査を行ってまいります。  〔教育長白石伸一君登壇〕 ◎教育長(白石伸一君) まず、1点目の旧統一教会に対する県教育委員会の認識と立場についてお答えいたします。 旧統一教会については、悪質商法に関する問題、親族の入信に起因する家族の困窮の問題など、社会的に様々な問題が指摘されている団体であると認識しております。国が現在、旧統一教会に対し、宗教法人法に基づき、法令に違反し、公共の福祉を著しく害すると明らかに認められる行為の疑いなどについて調査等を行っており、その推移を注視してまいります。 県教育委員会では、このような状況を踏まえ、旧統一教会や関係性が確認できる団体が関わる行事への名義後援や職員派遣は行わないこととしております。 次に、3点目の過去の名義後援についてお答えいたします。 名義後援を行ったのは、県教育委員会に申請された提出書類に記載された行事内容が、家庭教育支援の推進や、いじめ、虐待、自殺防止等、児童生徒の健全育成を目指す教育委員会の方針に反しなかったこと、提出書類からは旧統一教会との関係性を確認できなかったこと、また、当時は、現在のように社会的に問題が指摘されていなかったことなどによるものであり、当時の判断自体が誤りだったとは言えないと考えております。 過去の名義後援の取消しについてですが、当該名義後援は、特定の期日、期間に行われた行事に対して承認したものです。また、県教育委員会が定めている名義後援の要綱では、承認を受けた者が承認の条件に違反したと認めるときなどは、直ちにその是正を求め、それに従わなかった場合には承認を取り消すものとしています。 このようなことから、既に終了した行事の名義後援の取消しは想定しておりません。 加えて、過去の行事の名義後援を遡って取り消しても、後援した事実が取り消せるものではなく、取消しの直接的な効果は発生しないものであることなどから、総合的に判断して、名義後援を遡って取り消すことは行わないことといたしました。 今後は、名義後援を行う際は、可能な限り情報収集に努め、十分に精査し、厳正に対処することを徹底してまいります。  〔山本伸裕君登壇〕 ◆(山本伸裕君) 過去の名義後援については、当時は現在のように社会的に問題が指摘されていなかったから、判断が誤りだったとは言えない、これはひどい答弁だと私は思います。社会的な問題になっていなかった理由は、統一協会の名前を変え、別動隊をつくって、正体を隠して活動してきたからじゃありませんか。現在も過去もずっと被害は続いているんです。 霊感商法や高額献金、私も信者の御家族から直接お話を伺いました。統一協会からこういうふうに言われるんです。あなたの7代前の先祖が因縁で苦しんでいる。脅して、何度も何度も献金を強要して、もう1,000万円を超える被害ですよ。家族が何とか救い出そうと説得しようとしても、家族にはサタンが取りついているから話を聞いちゃ駄目だと教え込まれているんですよ。話が通じない。財産は奪われ、大切な家族の絆が壊され、もう地獄の日々が続いているんです。 私は、話を聞きながら、怒りと悲しみで胸が押し潰されそうになりました。絶対に許せないと思いました。社会的な批判が高まってなかったから名義後援したことは誤りではなかったなんて、そんなことを知事や教育長は被害者の家族を目の前にして同じことが言えるんでしょうか。熊本県や教育委員会名義後援して、彼らの活動にお墨つきを与えてきたんですよ。痛みをお感じになられませんか。 統一協会関連団体だと分かっていたかどうかにかかわらず、名義後援したことは不適切だった、誤りであったと、県民に説明し、謝罪するのが当然じゃないでしょうか。過去の名義後援が誤りとは言えないなんて、とんでもない答弁だと思います。容認するわけにはいきません。撤回すべきだと思いますが、いかがでしょうか。 知事、教育長、いかがでしょうか。そのことを確認したいと思いますので、お二人を代表して知事に再答弁を願います。  〔知事蒲島郁夫君登壇〕 ◎知事(蒲島郁夫君) 過去の名義後援については、繰り返しますけれども、当時県に提出された書類等から、主催者団体と旧統一教会の関係性を確認することはできず、イベントの内容自体は、名義後援の基準に合致しておりました。 このようなことから名義後援を行ったものであり、当時の判断が誤っていたとは言えません。 ただ、進行中のイベントについて、名義後援を取り消すとともに、今後、社会的に問題が指摘される団体が関係するイベント等への名義後援は行わないとすることで、県の考えを明確に示したいと思います。  〔山本伸裕君登壇〕 ◆(山本伸裕君) 結局ですね、過去の後援は間違いであったと表明なさらない。それは何でかというと、県も教育委員会も、統一協会が、憲法に抵触する信教の自由を踏みにじって、反社会的な活動を行ってきたカルト集団であるというふうに言えていないからじゃないでしょうか。 私はですね、統一協会がもたらした被害の実態を真剣に県は受け止めるべきであるし、だからこそ、そうした反社会的集団は絶対に容認できないという姿勢をはっきりと示すべきだと思います。 私は、県と県教育委員会のそうした立場に立てていないことに断固抗議するとともに、今後も追及を続けてまいりたいと思います。 次の質問に移ります。 10月6日に開催された流水型ダム環境保全対策検討委員会では、国交省から、洪水時を中心に流水型ダムで想定される事象や影響についての報告が行われました。そこでは、ダム上流部が大雨時に水没した場合、一部の植物が枯死したり、枯れてしまったり、貝類など移動能力の低い動物の個体が死滅したりするという可能性、さらに固有種のクモや昆虫、コウモリが生息する五木村の九折瀬洞は、一時的に浸水して動物の生息環境が変化し、個体が死滅するという可能性、ダムサイトでは、放流設備の整備に伴い、アユなどの移動経路が変化する可能性、ダム下流については、水質の変化でヤマセミやカワセミなどの生息環境が変化する可能性などの項目が列挙されています。 私たち日本共産党は、今回の説明書公表で環境への影響が明らかになったとして申入れを行いました。これに対する県側の御回答は、方法レポートというのは、これから行う環境影響調査の方法について項目を整理しただけのものであり、環境に影響を及ぼす可能性があるかどうかは、これから調査されるのだというものでありました。けれども、こうした御回答は、住民をごまかす極めて不誠実なものだと思います。 知事にお尋ねしたいのですが、第1に、国交省は、2020年12月18日の第2回球磨川流域治水協議会において、流水型ダム建設による環境への影響について、次のように説明していました。 流水型ダムは、平常時は水をためず、通常の川が流れている状態であるため、流入水と同じ水質を維持しやすい、魚類等の遡上、降下や土砂の流下など、河川の連続性を確保しやすい、流水と同時に土砂も流れるため、ダム下流への土砂供給が可能、その結果、堆積容量も減らすことが可能だ云々ということであります。 一方で、今回の方法レポートというのは、実際に環境への影響があるかどうかについてはまだ分からない、これから調査し、影響が出そうな場合には対策を考える、そういうものなんだと言われております。これはどういうことでしょうか。 国土交通省は、環境影響の検証も調査もせずに、一体何の根拠があって、2年前に、さも流水型ダムは環境への影響が少ないといった印象を発信していたのでしょうか。そして、知事は、これから影響を調査するんだと言われている流水型ダムについて、一体何の根拠があって、命と環境の両立ができるということを宣言されたのでしょうか。お答えください。 私たち日本共産党熊本県委員会は、令和2年7月豪雨災害を受けて、同年9月30日、さらに同年11月18日、たとえ穴あきダムでも重大な環境悪化をもたらすということを訴えて申入れを行っております。そこでは、湛水による湖岸の斜面崩壊の危険、下流の河川環境の悪化、動植物の生存環境への悪影響、堆砂により下流部への土砂供給が断ち切られる問題等について指摘した上で、専門家を入れた検証が必要であるということ、流域住民の意見を正確に反映させることなどを求めております。 今回の環境評価レポートの案で提示された環境への影響が予測される項目というのは、既に2年以上前に私たちが検証を求めてきた内容とかなり重なっております。 そこで、2点目に伺いたいのですが、県は盛んに環境への影響は今から国が調査するんだとおっしゃいます。私たちが2年前に行った専門家を入れた検証を求めた申入れに対して、熊本県は今まで何をやってこられたんでしょうか。どのような対応をしてこられたのかを御説明いただきたいと思います。 ところで、そもそも現行の環境アセスメントでは、事業実施の可否をも含む複数案の検討は義務づけられておりません。欧米では、計画の検討段階からの環境アセスメント、いわゆる戦略的アセスメントが導入されており、つまり現行の計画によって環境に悪影響が発生することが明らかになれば、その計画そのものの再検討を行うというものになっています。 しかし、日本の環境アセスの制度は、もし環境への影響がある可能性が明らかになった場合には、その影響を回避する対策もしくは低減策もしくは代替案を作成することとなっていますが、事業をストップさせることは義務づけられていません。 命と環境の両立という知事の公約、そして県民の宝である球磨川の清流を守らなければならないことの重要性から考えれば、今行われている環境影響調査の報告書が取りまとめられたとしても、そのことをもって建設にゴーサインが出たというわけにはいかないのではないでしょうか。 先日私たちが行った申入れの場で対応いただいた執行部の方から、もし今後環境への影響が起こる可能性が明らかになれば、その影響を最小限にするための対策を講じることになるとの説明がありました。 しかし、どんな事業であっても、環境への影響を最小限にするための対策というのは当たり前の話であって、地域の宝である清流を守ると言われた知事の住民に対する約束というのは、特別に重いものがあるのではないかと考えます。 環境を守れないのであれば、知事の決断で新たな流水型ダムの建設を中止するという覚悟を持たれるべきではないかと思いますが、知事の御見解を伺います。  〔知事蒲島郁夫君登壇〕 ◎知事(蒲島郁夫君) まず、国土交通省は、さも流水型ダムは環境への影響が少ないといった印象を発信したとの御指摘ですが、これは、流水型ダムの一般的な特徴等を説明されたものと私は認識しています。 次に、新たな流水型ダムを宣言した根拠ですが、私は、球磨川流域の治水の方向性を決断するに当たり、まず、国、流域市町村とともに検証委員会を立ち上げ、科学的、客観的な検証を行いました。 委員会では、仮に貯留型の川辺川ダムが存在した場合、人吉区間の浸水範囲が約6割程度減少し、浸水の深さが3メートルを超える範囲は約9割程度減少することが分かりました。 また、30回にわたり流域の皆様の御意見を伺うとともに、私に届いたお手紙や提案書、新聞への投書など、御指摘の申入れを含めて、あらゆる民意に向き合いました。 その中で、流域住民に共通する心からの願いは、命と環境の両立であると受け止めました。 学識経験者の方々からは、ゲートつき流水型ダムとすることで、環境への影響を大幅に下げることができるという御意見や、洪水調節の開始流量を大きくすることで、環境への影響を抑えることができるという御意見などを頂きました。 また、同時に、ダムの効果が過大に検証されているのではないかと言われた学識経験者の方もおられます。その方は、同時に、知事としては県民の命を守りたいと、その気持ちも分かるという御意見も頂きました。 これら全ての御意見を伺い、私は、知事として、ダムの効果を過信することはできないが、被害防止の確実性が担保されるダムを選択肢から外すことはできない、さらにダムを流水型にすることで、環境に極限まで配慮することができると判断いたしました。 次に、申入れに対するこれまでの県の対応についてです。 私は、貴委員会の申入れを含め、あらゆる民意と向き合い、命と清流を守る新たな流水型ダムを国に求めました。 また、同時に、客観的かつ科学的な環境への影響評価が必要と考え、法に基づく環境アセスメントあるいはそれと同等の環境アセスメントの実施を国に求めました。 国においては、昨年4月、新たな流水型ダムの調査検討に着手されました。5月には、法と同等の環境影響評価を実施することが国から示され、6月には、事業による影響や環境保全措置等を検討するため、各分野の専門家から成る流水型ダム環境保全対策検討委員会が設置されました。この委員会には、県もオブザーバーとして毎回参加しています。 一方、私は、昨年7月から10月にかけて、仮設団地を訪問し、被災された方々から改めて御意見を伺いました。 7月には、長期的な河川整備の基本的な方針を検討する国の審議会の小委員会が始まりました。私も委員の一人として参加し、皆さんからお聴きした被災された方々の球磨川に対する深い愛情、例えば、地域の宝であり、子供たちが川で遊べる清流球磨川を残してほしいなどの御意見を、そこでお伝えしました。 そして、昨年12月、私が表明した命と清流を守る緑の流域治水の考えを盛り込んだ球磨川水系河川整備基本方針が取りまとめられました。 また、本年8月には、この基本方針に沿って、国、県連携の下、球磨川流域における今後おおむね30年間の具体的な河川整備の目標や内容を盛り込んだ球磨川水系河川整備計画が策定されました。 国に求めた法と同等の環境アセスメントについては、本年3月、環境配慮レポートが公表されました。県では、各分野の専門家から成る流水型ダムに係る環境影響評価審査会を開催し、ダム建設予定地など、現地を御確認いただきました。 そして、6月、県審査会や関係市町村長などの御意見を踏まえ、この環境配慮レポートに対する知事意見を述べました。 その後、2回の国の委員会における議論を経て、11月、国から方法レポートが公表されました。この方法レポートの全ての説明会にも県の担当者が出向き、参加者の御意見などを直接お聞きしました。 なお、住民の皆様の安全、安心を早急に確保することは喫緊の課題であることから、発災後速やかに、河道掘削や避難体制の強化など、命を守る対策に全力で取り組んでおります。 このように、県としては、専門家の知見を取り入れながら、流域住民の皆様の御意見をしっかりお聞きし、国や流域市町村と連携しながら、命と環境を守る取組を着実に進めてきています。 今後も、方法レポートに対する知事意見を述べるとともに、年内にスタートする方向で進めている事業の方向性や進捗を確認する仕組みの中で、流水型ダムについて、流域市町村や流域住民の皆様と一体となって確認してまいります。 最後の御意見に対する私の見解を述べます。 私は、甚大な被害をもたらした令和2年7月豪雨を受け、決して取り戻すことができない命の重みを考え、二度とこのような被害を起こしてはならないと固く決意し、住民の命を守り、さらには地域の宝である清流をも守る新たな流水型ダムを国に求めました。 今後も、不退転の決意で、命と環境の両立を目指す新たな流水型ダムを含む緑の流域治水の取組を進めてまいります。  〔山本伸裕君登壇〕 ◆(山本伸裕君) 私は、先ほどの質問で、方法レポートでは、大雨で水没したら、植物が、あるいは動物が死滅する、絶滅すると書いてあるじゃないかと、これでどうして環境を守れるんだというふうにお尋ねしたら、いや、それは、本当に影響があるかどうかは、これから調査するんだというようなことを言われたわけです。いろいろ知事は説明されましたが、これから調査すると言っているのに、知事は何を根拠に調査もしない段階で環境が守れると言われたのかとお尋ねしたんですが、そのことについてはお答えになってないように思います。 昨日の一般質問においても、五木村の湛水区域についての議論がございました。知事は、答弁の中で、流水型ダム完成後は、一定規模以上の洪水時には湛水区域に水がたまりますが、平常時には水はたまらず、周辺地域の自然、清流が残されますと答弁されました。しかし、ダムの供用開始前に湛水試験をしないといけないではありませんか。五木源パークも、コテージも、水没して土砂や流木に埋もれ、湛水域の動植物は、そこで生息できなくなるではありませんか。環境に影響が出るというのが分かっているのに、自然、清流が残されるなどとなぜ公言できるのか、理解できません。 そうかと思えば、また一方で知事は、土砂や流木が堆積するんじゃないかと皆さんが環境に心配しているのは伺っておりますので、この点はこれから環境アセスをやって保全策を検討していきますと言われました。結局、私たちが求めてきた専門家を入れた検証というのは、この2年間何もやってこなかったのではないでしょうか。検証もやらずして、どうして命と環境の両立のための流水型ダムなんだとおっしゃっているのでしょうか。あまりにも無責任ではないでしょうか。 流水型ダムでも、清流を壊してしまうことは明らかであります。知事は、球磨川、川辺川のかけがえのない清流を守るためにも、ダム建設は一旦立ち止まるべきだということを申し上げたいと思います。 なお、知事は、緑の流域治水への決意も語られました。そうであるならば、現在県が検証している田んぼダムを治水計画の中に取り入れるのでしょうか。どれだけの規模でどれだけの治水効果を目指していくのか、こうしたこともきっちり示していっていただきたいと思います。 次の質問に移ります。 熊本大学の大本照憲特任教授らが土木学会で公表された論文では、令和2年7月豪雨災害での人吉市における水位についての検証結果を明らかにされています。このことが昨年9月の読売新聞で報じられました。 その内容というのは、令和2年7月豪雨レベルの毎秒8,000トンでは、川の水が人吉市街地を流れる球磨川に存在する中州である中川原公園付近でせき止められ、水位が2メートル上昇することが判明したというものであります。 今表示されているのが、そのイメージ図であります。(資料を示す) 上の図で木が書かれている中州が中川原公園であります。下の図が、令和2年7月豪雨当時の流量が押し寄せたときの図であります。せき止められた公園や橋によって水位が上昇し、氾濫したという検証結果が示されています。 次にお示しするのが、中川原公園付近を上空から撮影した実際の画像であります。(資料を示す) 写真中央が中川原公園、そしてそのちょうど上に架かっている橋が人吉大橋であります。この画像を念頭に置いた上で、次の写真を御覧いただきたいと思います。(資料を示す) これは、令和2年10月6日、第2回豪雨検証委員会で配付された資料で、さっきの人吉大橋から上流右岸側を撮影した写真です。水害の痕跡から、1.9メートル水位が下がれば、堤防から越水しなかった、だから川辺川ダムが必要だとされた写真であります。 川の水が公園付近で2メートル上昇したということが事実であるとすれば、川辺川ダムの建設を待たずとも、中川原公園を撤去すれば、少なくとも令和2年7月豪雨レベルの水害については、人吉市街地の浸水は相当軽減された可能性があるということになるのではないでしょうか。 この問題では、国会でも我が党の仁比聡平参院議員が取り上げ、国土交通省水管理・保全局長は、そうした傾向があることは承知しているので、公園の地盤高を下げる必要があるということを認めた上で、2メートルの掘削を行う河川整備計画を策定したと答弁されました。 これが先ほどの図面なのですが、再び表示します。(資料を示す) ところが、2メートル掘削したところで、水位は22センチしか下がらないんです。人吉市は、中川原公園について、国交省に検証を依頼し、2メートル地盤を下げる案に加え、公園を廃止する案について検討していますが、県は、人吉市に対して、公園の撤去を求めるべきではないでしょうか。 さらに、私が重大だと思うのは、水害発生から4か月後の11月、知事は、4人の河川工学者から治水対策についての意見を聴取されていますが、大本教授はその中のお一人として参加をされ、蒲島知事に、流下能力を引き上げるために、中川原公園のスリム化が必要だということも提言されています。知事は、このわずか1週間後に、新たな川辺川ダム建設を表明されたわけでありますが、一体どれくらい真剣に大本教授の指摘を受け止められたのでありましょうか。 私たち日本共産党は、人吉市の被災住民を対象にアンケート調査を行いました。その結果、水害対策については、ダムによらない対策を求めるという方が106名、回答いただいた方の64%を占めていたのに対し、ダムによる対策を求められた方は34名、20.6%でありました。ダムによらない対策を選ばれた方に、どのような対策がよいと思いますかと複数回答でお尋ねしたところ、中川原を小さくする、またはなくすとお答えになった方が、何と回答者の67%にも上っております。 その理由として、中川原公園を生かしたまちづくりという話もあるが、何より治水対策を一番に優先すべきだとのコメントの記載もありました。私もそのとおりであろうと思います。 再び水害に見舞われるのが心配で、元いた場所での再建について、前になかなか進むことができないという被災者の方々がたくさんいらっしゃる状況の中においては、この大本教授らの検証結果について、住民の皆さんにお知らせすることが非常に重要ではないでしょうか。その上で、住民合意の下に、中川原公園の撤去を国に求めるべきではないでしょうか。 以上、蒲島知事にお尋ねします。  〔知事蒲島郁夫君登壇〕 ◎知事(蒲島郁夫君) 中川原公園は、球磨川の河川中央部にある中州を人吉市が都市公園として管理しています。平常時は多くの市民に利用されていましたが、令和2年7月豪雨で被災いたしました。 復旧を検討するに当たって、河川増水時の影響を科学的に検証する必要があるため、河川管理者である国に復旧案の検証を依頼されました。 国は、原形復旧案、また、公園内の施設や樹木等を撤去し復旧する案、3番目は、公園の地盤を約2メートル下げる案、4番目は、公園の地盤を約4メートル下げて公園を廃止する案の4案について、水理解析や熊本大学の大本特任教授の監修による模型実験などにより、水の流れや水位の変化を検証されました。 その検証を受け、人吉市では、原形復旧案に比べて、地盤を約2メートル下げる案と約4メートル下げる公園廃止案では、水位の変化に大きな差はないことを挙げ、それとともに、過去10年間の水位実績データから、地盤を約2メートル下げる案では、公園の浸水頻度が年に1回程度であること、さらに歴史的な観点や市民の皆さんの御意見などを踏まえて、被災前の公園の地盤高から約2メートル下げる案で復旧すると判断されました。 このことについて、市議会において説明がなされ、市の広報誌で多くの市民に周知がなされています。 中川原公園については、撤去すべき、残してほしいと様々な御意見があることは承知していますが、人吉市は適切に対応されており、私は市の判断を尊重したいと思います。 議員御指摘のとおり、私は、令和2年11月、大本特任教授から中川原公園の阻害性を指摘する御意見を伺いました。 一方で、中核都市である人吉市は救わなければならない、それは、上流側でポケットが必要だが、一つの可能性として持っているのは、川辺川ダムが計画されているところだと思うとの御意見も同時に頂きました。 御承知のとおり、令和2年7月豪雨は、人吉市街地のみならず、流域のあらゆるところで甚大な被害が発生いたしました。 2年前、私は、被害防止の確実性が担保されるダムを選択肢から外すことはできないと判断いたしました。国とともに8月に策定した河川整備計画にも位置づけられた中川原公園の対策を含め、流域全体の総合力で安全、安心を実現していく緑の流域治水を、今後とも不退転の決意で取り組んでまいります。  〔山本伸裕君登壇〕 ◆(山本伸裕君) 大本先生はですね、当時の流量では川の水が公園付近でせき止められ、水位が2メートル上昇したと。さらに、さらに、公園付近の3本の橋が水没すると、橋がない場合に比べて水位が最大2メートル高くなることも分かったとおっしゃっています。合計4メートルです。これは重大な検証結果だと思います。もし、中川原公園による水位上昇がなければ、氾濫水位は低く抑えられたのではないか、もしくは氾濫しなかったのではないかということになるのではないでしょうか。 しかも、この中川原公園が存在する位置は、ちょうど支流である山田川、胸川が球磨川に合流するところ、ぶつかるところであります。そこに中川原公園が存在しております。山田川は、球磨川からのバックウオーターで氾濫したと県や国交省はおっしゃっておられますが、ちょうど山田川と球磨川に挟まれている紺屋町では、氾濫でお二人の方が亡くなっているんです。中川原公園が山田川からの打ち出しを阻害していなければ、結果はどうなっていたのか、本当に真剣に検証すべきです。 中川原公園の管理は人吉市だから人吉市の判断だと言って、人ごとのように済ませてしまうのではなくて、命に関わる問題であります。大本先生のお話を聞かれたのは蒲島知事でありますから、人吉市の判断を尊重するのはもちろんですが、人命最優先で中川原公園の存在の可否について意見を表明すべきだと思います。 それから、どれだけ掘削したらよいのかということについて、人吉市議会では、2メートル掘削、そこからさらに2メートル掘削というところまでしか検討されていないんですが、平水位までさらにあと2メートル掘削すること、すなわち中川原公園の完全撤去です。そのことを本当に真剣に検討すべきではないかということを申し上げたいと思います。 次の質問に移ります。 半導体受託製造世界最大手のTSMCが熊本県に工場を新設するということで、企業投資や大規模開発が過熱しています。その一方で、不安が広がっている問題が、地下水の枯渇や汚染など、環境への影響であります。 新工場の建設地である菊陽町原水の地域は、ちょうどその地下には地下水プールと呼ばれる地下水のタンクのような場所が存在しています。 スクリーンを御覧ください。(資料を示す) この地域には、ざる田と呼ばれる水田など、浸透率の高い農地が地下水の涵養に大きな役割を果たしています。この地下水プールに流れ込んだ地下水は、水位を下げながら熊本平野へとゆっくり時間をかけながら流れ、ミネラルや炭酸分がバランスよく溶け込んだおいしくて体に優しい天然水となり、熊本地域の水道水源のほぼ全てを賄っているわけであります。 他県の方々は、熊本の水はおいしいと口々に言われますが、こうした奇跡的な自然のメカニズム、恩恵を受けているわけであります。日本はおろか、世界中においてもまれな存在、まさに熊本の宝と言える存在ではないでしょうか。 一方で、近年、熊本の地下水の水量や水質についての懸念が高まっています。2015年に取りまとめられた熊本地域地下水総合保全管理計画では「水量、水質とも危険信号を示している。」と警告されています。 県の水環境課長であった小嶋一誠さんが、2010年、民間団体が主催したフォーラムで講演をされていますが、その中で、農地の埋立てなど500ヘクタールの開発によって、5,000万トンの涵養量が失われたと指摘されています。 また、同じく県職員で、環境立県推進課におられた田中伸廣さんは、平成24年3月に開かれた研修会で、将来予測として涵養量が4,000万トン減少し、地下水位が菊陽町辛川地点で1.7メートル低下し、江津湖の湧水量がおよそ2,000万トン、18%減少するという試算を明らかにされています。 一方、半導体の製造工程においては、純度の高い大量の水が欠かせません。TSMCが熊本を工場進出の地に選んだ理由の一つが、この豊富な地下水資源であったと言われております。 TSMCとソニー、デンソーによって新たに設立される合弁会社JASMによると、新工場での1日当たりの地下水採取量は1万2,000トン、1世帯当たりの使用量と比較すると、およそ1万8,000世帯分の水を使用するということになります。 次に、排水の問題です。半導体を製造する際には、人体に悪影響を及ぼす多種多様な化学物質が使用されます。ウエハーに付着した化学物質を洗浄するために大量の水が利用され、その汚染水は70%がろ過されて再利用、30%は排水基準に見合った成分になるまで希釈し、つまり薄めて下水管に流される。そして、その残渣は、汚泥として産業廃棄物として処理されるということであります。 そこで質問ですが、熊本県として、現在の地下水位、湧水量、涵養量と使用量との関係について、科学的、専門的な調査を県として行い、その内容を公表すべきであると考えますが、いかがでしょうか。 新会社JASMが進出するこの地下水涵養域は、通常の5倍から10倍も水が浸透しやすい土壌に恵まれています。そういう性質の土壌に水田を開いていったからこそ、大量の水が地下に浸透し、豊富な地下水を生み出してきたのであります。 しかし、この地域は、今や、広大な用地や豊かな水資源に恵まれているということで、半導体関連産業がどんどん進出を進める地域に変貌しつつあります。1990年には東京エレクトロン、2000年にはソニーセミコン、2005年には富士フイルムなど、次々と半導体産業が進出。一方、社会経済インフラでは、国道3号北バイパスの開通、光の森地区の大型商業施設の開業、菊陽バイパス沿いの商業施設の集積などが進んできました。 そして、新会社の進出に伴い、県内外の半導体関連企業の事業所開設や設備投資が次々と発表されております。合計で、今現在、30を超える半導体関連企業が新増設を準備していると言われており、菊陽町周辺では深刻な工業用地不足が起こっています。 熊本県は、再来年までに約50ヘクタールの工業団地を整備する計画だと伺っております。また、熊本銀行の調査によると、昨年11月以降、国内外の半導体関連企業などおよそ100社から、菊陽町に土地を確保したいといった相談が寄せられているといいます。さらに加えて、多くの道路建設や熊本空港アクセス鉄道などのインフラ整備、さらに物流倉庫や宿泊ホテル、アパート、マンション、スーパーやコンビニ、飲食店など、インフラの整備がどんどん進んでいくことが予想されます。 菊陽町で土地が確保できなかった企業は、隣接する大津町や菊池市などへの進出を検討しているということで、この1年で大津町と菊池市の工業地の地価が大幅に上昇しているといいます。これらの地域も地下水涵養域でありますが、市街化調整区域や農業振興地域を緩和すべきだという声も大きくなっております。 熊本地域においては、非涵養地帯、すなわちアスファルトや建物建設などで地下水が涵養できない地域となった面積が、1976年から2014年までの38年間で2.5倍に拡大したとされています。さらに、今回の半導体関連産業の進出によって、一体どれだけ非涵養地帯が広がっていくのでしょうか。 そこで、2つ目の質問ですが、関連企業の進出や工業用地の造成、道路の拡張延長やアクセス鉄道なども含めて、今計画されているものでどれだけの広さの開発が行われ、涵養地域が失われることになるのか、その実態を掌握し、地下水涵養への影響を明らかにし、県民に説明すべきではないでしょうか。 第3に、熊本県は、地下水を守るための保全条例をつくっています。その条例に基づき、会社側に地下水保全に関する責任と義務を厳格に履行させなければなりません。なおかつ、地下水の利用と排水の詳細な方法に関しては、企業活動に関わる問題で明らかにされない懸念もあります。水俣病という重大な環境汚染と地域、住民への被害を発生させてしまった熊本県としては、なお一層厳しい姿勢で環境保全に取り組む姿勢が必要であると考えます。 そこで、新会社と熊本県との間で、地下水のくみ上げ量、具体的な涵養対策の内容と規模、排水に含まれる有害物質の種類と排水量、産業廃棄物として処理される残渣の形状と排出先と排出量など、厳格な対策を取ることを求めた協定を取り交わすべきであると考えますが、いかがでしょうか。環境生活部長にお尋ねします。  〔環境生活部長小原雅之君登壇〕 ◎環境生活部長(小原雅之君) 地下水は、熊本都市圏100万人の生活と産業を支える未来に守り継がなければならない、かけがえのない熊本の宝です。 この地下水は、長期的に水位が低下傾向であったため、平成16年から、白川中流域等で人工的な地下水涵養が開始されました。 県では、観測井戸を県内各地に設け、地下水位等を観測していますが、平成17年度以降、県の観測井戸の水位の多くは回復傾向にあります。江津湖の湧水量などは横ばいとなっています。 なお、地下水位のデータ等は、くまもと地下水財団に集約し、将来推計や、学識者を交えた検討に活用いたします。 次に、開発面積と地下水の涵養についてお答えします。 JASMでは、約23ヘクタールの開発が行われますが、地下水の涵養域の減少と取水量に見合う涵養を行うと発表されています。 県では、地下水涵養が着実に実現されるよう、白川中流域の関係市町や団体と連携し、しっかりと取り組んでまいります。 また、今後の関連企業の進出や工業団地整備等に伴う地下水涵養量の減少については、雨水浸透ますの設置、浸透性調整池の整備、地下水のみに頼らない河川等の未利用水の利活用など、様々な対策を検討しており、地下水への影響が生じないよう全力で取り組みます。 次に、環境に関する協定についてお答えいたします。 本年4月に県の立会いの下、JASMと菊陽町が工場新設に関する協定を締結いたしました。その中で、法令、条例等を遵守し、環境の保全に努めると規定されております。 排水については、全て下水道に排出される計画となっており、水質汚濁防止法、下水道法、特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律による監視や規制があります。さらに、熊本県地下水保全条例に基づく、法律より厳しい規制基準によって環境汚染の防止を図っています。 これらの法令の規定により、有害物質を含む排水を排出する工場は、施設設置前に県への届出が必要で、工場稼働後は、規制基準の遵守と自主検査の実施が義務づけられております。 県は、届出の事前段階から、排水処理施設の性能、有害物質等の漏えい防止対策などが基準を満たしているか、丁寧に審査し、必要に応じて指導を行っております。 また、工場稼動後は、随時立入検査を実施し、規制基準等が遵守されているか、継続的に確認いたします。 JASMとの現在の協議の中では、排水は希釈ではなく、水処理施設による沈殿除去等の適正な方法により、下水道の受入れ基準を満たした上で、下水道に排出されることを確認しております。 下水処理場では、有害物質を含めた排水の規制基準を満たした上で河川へ放流され、河川への放流後も、河川及び海域の水質や底質が有害化学物質等に係る環境基準を達成しているか、定期的な調査により監視を行います。 また、排出される産業廃棄物については、産業廃棄物管理票、いわゆるマニフェストにより、種類、数量や処理先を把握するとともに、必要に応じて立入検査を実施し、適正に処理されているか確認いたします。 このように、既に締結している協定を踏まえ、JASMが法令、条例等を遵守し、県や関係する市町が多面的な監視を行うことで、地下水や公共用水域の保全、廃棄物の適正処理が図られると考えております。 熊本の宝である地下水や自然豊かな環境を守り、将来に引き継いでいくことは、今を生きる私たちの責務です。 引き続き、関係機関と連携し、県民の皆様の不安を解消し、環境保全に取り組んでまいります。  〔山本伸裕君登壇〕 ◆(山本伸裕君) 平成17年度以降、県が観測している地点の多くでは地下水は回復傾向にある、江津湖の湧水量は横ばいだと言われました。しかし、先ほど私が紹介しました田中さんの講演というのは、平成24年に行われているんです。長期的に見れば、熊本の地下水の湧水量は減少傾向にあると。平成17年度以降は、横ばい、回復傾向にあるといっても、以前からすると減少傾向に変わりはないんです。それはなぜかというと、田中さんによれば、土地利用状況の変化にあるんだと。雨水が地下に浸透しやすい水田や畑地などのいわゆる涵養域の減少が顕著であり、非涵養域が増加している、特に重要な涵養域である水田の作付面積が減少していると。だから地下水の涵養量が減少しないよう、涵養域を守らなければならないと警鐘を鳴らしておられるわけです。県職員の皆様方の先輩ですから、皆さんよく学ばないといけないんじゃないでしょうか。 JASMは、取水量に見合う涵養を行う、関連企業の進出や工業団地整備等に伴う地下水涵養量の減少については、雨水浸透ますの設置や浸透性調整池の整備、未利用水の利活用など、様々な対策を検討していると言われました。 いろいろやりますというのは結構なんですが、先ほど紹介した小嶋さんの報告の中には、湛水能力、すなわち水をためる能力が高い水田の作付面積がどれだけ減少して、施設園芸型の作物に置き換わっているか、そんな数値まで明らかにして、同じ農地でも地下水涵養力の減少を懸念されているのであります。そこまで丁寧に分析をされているんです。 住宅地が増えても道路が増えても水を浸透させるような工夫がされますと言われますが、そんな大ざっぱな分析で大丈夫なんでしょうか。道路や鉄道が通れば、当然地盤は固められるわけであります。工場が建てば、ざる田は消滅するわけであります。そうしたことによる涵養力の減少、そして地下水涵養量との関係をもっと真剣に検証すべきであると私は思います。 その上ではっきりさせなければならないことは、涵養量を上回る地下水使用量が続けば、地下水は、いずれ枯渇してしまうということであります。 昨日の一般質問では、知事は、御答弁の中で、大空港構想を牽引する事業としての空港アクセス鉄道の整備ということを言われましたが、いや、もう涵養域での大型開発というものは、私は見直すべきだと思います。 知事はよく、50年後、100年後を見据えた熊本の発展というお話をされます。私は、それを言うんだったら、これからますます気候変動や水資源の不足が心配されるような将来予測の下で、蛇口をひねればミネラルウオーター、このかけがえのない豊富な地下水を守ることこそが、必ず熊本の未来において大きな力を与えるものとなると確信をします。 排水の問題ですが、現行のルールでは、有害物質が含まれていても、希釈して濃度が基準以下になれば、どれだけでも排水できることになっています。しかし、薄めたからといって有害物質の量が減るわけではありません。 福島原発事故の汚染水問題でも、希釈したら大丈夫ですと海に放出しようという話が大問題になっていますが、結局、大量に流せば大量の有害物質が排出されるということになるではありませんか。本当にそれでいいのでしょうか。 私は、くみ上げにしても排水にしても、さすが熊本は地下水保全にしっかり取り組んでいるという信頼を示すことが、将来の発展に必ずつながると思います。 そういう意味でも、JASMと菊陽町とで工場進出に係る協定を取り交わしていると言われましたが、ぜひ、県との間で、地下水保全に係る協定の締結を結ぶべきだということを改めて求めたいと思います。 ○副議長(髙野洋介君) 残り時間が少なくなりましたので、発言を簡潔に願います。 ◆(山本伸裕君) (続) 最後に要望を申し上げます。 昨日、知事は、自民党松田議員の三択質問に答え、県が負担する子供医療費助成を、来年度から、通院費は就学前まで、入院費は義務教育期間まで拡大する方向で検討を進めると答弁されました。この御決断を、私も1期目から毎回の議会で希望してきた者として、心から歓迎したいと思います。 私、1期目の初めての一般質問で取り上げさせていただいて以降、調べてみましたら、これまで、質疑や討論も含めると、本会議においてトータル10回、対象年齢の拡大を要望してまいりました。ようやくそれが動き出したかと思うと、感慨深いものがございます。 その一方で、子供医療費助成の拡充を求めてきた女性団体の皆さんが、高校3年生までぜひ助成対象年齢を拡充してほしいとの請願を昨日提出されました。もちろん、今回の拡充の御決断を大いに歓迎したいと思うのですが、例えば福島県、静岡県、鳥取県は、高校3年生まで助成を実施しております。せっかく全国ワーストワンの汚名を抜け出そうということで足を踏み出していただいたわけですから、一気に全国トップレベルの助成拡充まで、ぜひ積極的に御検討いただくことを願うものであります。 以上で私の質問を終わります。時間が心配で大変早口でしゃべりましたが、無事に終わることができました。 ありがとうございました。(拍手) ○副議長(髙野洋介君) この際、5分間休憩いたします。  午前11時休憩    ――――――○――――――  午前11時11分開議 ○副議長(髙野洋介君) 休憩前に引き続き会議を開きます。 濱田大造君。  〔濱田大造君登壇〕(拍手)
    ◆(濱田大造君) 皆さん、こんにちは。熊本市第一選挙区選出......(発言する者あり)ありがとうございます。無所属の濱田大造でございます。今年も本当にいろんなことがございました。個人的には、5月に急遽補欠選挙がございまして、また再びこの議会に戻ることができました。本当にもうありがたい話でして、感謝しかございません。 今期5回目の質問になります。一生懸命頑張りますので、よろしくお願い申し上げます。 TSMCについて質問いたします。 昨年10月、世界的な半導体メーカー、TSMCの熊本進出が決定しました。TSMCは、台湾に本社を構える世界的な半導体メーカーです。時価総額約70兆円の巨大企業、半導体企業として唯一、時価総額で世界のベストテンに入っている巨大企業です。 県によりますと、今回のTSMC誘致は、国主導で進められたものだそうです。誘致に際して、県がTSMCとの間に入って調整するといったことはなく、既に決まった話として誘致がなされたとのことでした。 IT技術の進展に伴い、世界的に半導体不足が起きています。半導体を作っても作っても足りない状態にあります。現在、半導体がないと社会が成り立たないとさえ言われています。 現在、日本政府は、半導体を国家の経済安全保障をつかさどる戦略物資と捉えています。また、御承知のとおり、中国と台湾は、現在、歴史的な緊張状態にあります。日本政府は、地政学的な観点からも、アメリカ政府と歩調を取り、今回のTSMCの誘致を進めたとされています。 日本政府は、今回のTSMC誘致を国家的プロジェクトと位置づけました。TSMCの子会社であるJASMの熊本工場建設には、約1兆円の建設費用が必要とされていますが、日本政府は、外国企業に対しては異例となる建設費用の約半分に当たる4,760億円の国費を充てることが既に決まっています。 本県に1兆円を超える巨額な投資が行われることになったわけです。もちろん、経済波及効果が言われ、日本の半導体復活、シリコンアイランドの復活など、現在、様々なことが言われています。期待は大きく膨らんでいるところです。 今回は、JASM工場建設に際して、県民が知りたいと考えている質問を行いたいと考えています。インフラの問題、人材の問題、水の問題、そして県としての戦略ビジョンに関してです。 質問をする前に、日本における半導体の歴史、流れを簡単に振り返ってみます。 日本の半導体産業は、1980年から90年代に隆盛を極めました。東芝、NEC、日立、富士通、ソニー、三菱電機、松下電器などと、日本の半導体メーカーの世界での市場シェアは70%を超えていた時期がありました。しかし、正確に言うと、日本が世界シェアを握っていたのは、半導体の中でも、メモリーの分野でした。 半導体は、大きく分けて3つの種類があります。演算を行うロジック半導体、記憶を行うメモリー半導体、高い電圧、大きな電流を扱うことができるパワー半導体の3つです。 約40年前、日本の半導体メーカーは、メモリーの技術を磨き、開発から製造、そして販売までを1社で手がける垂直統合型のビジネスモデルを確立し、汎用品としての半導体の大量生産に成功しました。結果、メモリー半導体が、テレビ、パソコンなどの電気製品に広く使われるようになり、日本の半導体が世界の市場を席巻したのです。 私は、30歳まで総合商社で勤務した経験があります。総合商社は、あらゆる商品を扱うと考えられていますが、唯一扱えなかったのが半導体でした。半導体メーカーが、開発から製造、そして販売までを手がけていましたので、販売する余地がなかったからです。 その隆盛を極めた日本の半導体は、現在どうなっているかといいますと、世界シェアは10%を切るまでになっています。世界シェアが70%近くあったのが、10%以下に落ち込んだわけです。 日本の半導体産業の衰退は、日本の国力衰退の象徴的な存在として語られることが多くなっているように思います。 では、なぜあれほど隆盛を極めた日本の半導体産業が衰退してしまったのでしょうか。理由は大きく分けて2つあったと考えています。 1つ目の理由、日米半導体協定の結果。2つ目の理由、微細化技術の進展によって、半導体の国際分業体制が進んだため。 日米半導体協定は、1986年9月に締結された協定です。協定は、第1次、1986年から91年と、第2次、1991年から96年の2回締結され、合計10年間にわたり有効でした。 日本は、この協定を結ばされたことにより、日本の半導体市場の海外メーカーへの開放と日本の半導体メーカーによるダンピングの防止を強く求められることになります。アメリカ政府は、日本の半導体産業がこれ以上強くなることを恐れ、日本に不利になる協定を結ばせたと言えるのです。 この協定の締結によって、1981年に世界の半導体市場の約70%のシェアを誇っていた日本の半導体産業は、1990年代以降、急速に国際競争力を失っていきました。ちなみに、1986年の半導体売上げランキングにおいて、世界1位はNEC、2位が東芝、3位は日立製作所でした。 また、1991年に締結された第2次半導体協定では、日本の半導体市場における外国製のシェアを20%以上にするという文言も入りました。 2次にわたる半導体協定によって、日本企業は外国製の半導体を輸入せざるを得なくなり、これによって、台湾、韓国、さらには中国への技術移転が進むことになりました。九州の半導体工場で働く日本の技術者が、週末、韓国に渡って技術指導に赴く姿が当時話題となりました。 2次にわたる日米半導体協定によって、日本の半導体産業は、確実にシェアを奪われていきました。 次に、微細化技術の進展がありました。 半導体は、時代とともにどんどん小さくなっています。今やナノの世界。1ナノは、100万分の1ミリです。半導体は、微細化が進めば進むほど、使用する電力が少なくて済み、性能も向上します。スマホの性能がどんどんよくなる背景には、微細化技術の進展がありました。 半導体の微細化を進めるには、従来以上の工場のクリーン化が必要になります。巨大なクリーンルームを完備する必要に迫られ、また、微細化が進むほど、半導体を作る工作機械の値段が高額なものとなっていきました。 結果、1つの半導体の工場を建設するのに、少なくとも数千億円から、場合によっては1兆円を超える額の設備投資が必要となりました。また、半導体の設計自体もより複雑、より高度なものとなり、設計自体にも数百億円から数千億円の投資が必要とされる時代になったのです。 繰り返しますが、日本の半導体メーカーは、半導体の設計から製造、販売を1社で手がける垂直統合型のビジネスモデルを採用しています。 時代はいつの間にか、設計、製造、販売を国際的に分業する水平型の分業体制に切り替わっていたのです。日本の半導体メーカーは、今や世界標準となった水平型の国際分業体制に乗り遅れてしまったとも言えるのです。 半導体は、完成するまで、つまり円盤状のウエハーがチップに加工されるまでに、数え切れないほどの段階を経ます。ウエハーの上に回路を形成する前工程と、ウエハーを細かく切断する作業から始めて、チップとして完成するまでの後工程があり、どちらの工程も幾つもの細かい工程に分かれています。 TSMCは、世界で初めて、半導体の製造の中でも、前工程を請け負うファウンダーとして誕生した会社です。半導体の工場を持たない、設計に特化した世界中のファブレス企業から生産を委託されるファウンダーとして地位を確立していったのです。 現在、半導体は、その設計は欧米各国で行い、製造における前工程を台湾で行うという大きな流れがあります。TSMCは、世界の約500のファブレス企業から半導体の製造、前工程を委託されており、世界で生産される半導体の実に6割が、TSMCの前工程を経ていると言われています。 そんなTSMCが熊本にやってきます。日本初となるTSMCの子会社であるJASMの工場は、ソニーグループと自動車部品メーカーのデンソーとの合弁で建設され、今年4月に着工し、2024年12月までに生産開始を見込んでいます。敷地面積は、約23万平方メートル。計画によると、工場の従業員約1,700人のうち、320人はTSMCの台湾からの駐在員、200人はソニーより派遣され、残り約1,200人が新卒や中途採用並びにアウトソーシングを予定しているそうです。投資総額は約1兆円で、日本政府は、最大4,760億円の補助金を出す予定です。生産される半導体は、自動車やスマホ向けの12から16ナノ及び22から28ナノの製品とされています。 TSMCの進出を受けて、県内外から多くの半導体関連企業が熊本に進出すると見られており、地元銀行グループの試算によると、県内への経済波及効果は、2022年からの10年間で約4兆2,900億円に上っています。 では、質問に入ります。 まず、交通インフラと工業用地について質問します。 JASMの工場周辺は、企業が集積している土地柄であり、既に朝夕の交通渋滞が指摘されているエリアと言えました。県は、これまでも様々な対策に取り組んでおられますが、今回の進出によって、さらに交通量が増加すると見込まれますので、今後、セミコンテクノパーク周辺の交通インフラ対策にどのように取り組んでいかれるのか、土木部長にお尋ねします。 次に、半導体関連企業の誘致が今後ますます盛んになることが予想されていますが、JASMの工場周辺に県が所有する工業団地は全て完売されており、ない状態が続いています。今後増えることが確実視されている半導体関連企業誘致に際して、今後、工業団地など工業用地の確保にどう対応していくのか、商工労働部長に質問します。 次に、人材の確保と育成について質問をします。 今回、JASMだけで約1,200人の人材が必要となります。県は、この1年間、県内の大学や国立高専、専門学校などの関係機関と人材育成に関して協議を重ねてきましたが、半導体関連の人材の確保と育成についてどのように取り組んでいるのか、商工労働部長に質問します。 次に、水の問題を質問します。 JASMによれば、JASMの熊本工場で使用する地下水は、1日当たり1万2,000トンで、年間約430万トンを見込んでいるそうです。今回の工場建設に際しては、高度な水回収、リサイクルシステムを導入し、工場、事務所で使用する水の70%を再利用するとしています。 御承知のとおり、熊本市は、世界的にもまれな地下水が豊富な水の都とされています。約74万人の熊本市民が、地下水由来の水を生活用水として使用するというぜいたくな水の使い方をしています。今回のJASM工場誘致も、決め手は熊本の豊富な水だったとされています。JASMの工場は、熊本市と隣接する菊陽町で建設中です。 そこで質問です。 水資源は限りがあるとされています。半導体の製造には、莫大な水が必要とされ、JASMの試算によれば、年間430万トンを見込んでいます。また、熊本進出に伴い、随伴投資として、素材関連をはじめとするかなりの数の関連企業の熊本進出が予想されています。 水資源は、どこまでなら使用可能なのでしょうか。無制限に使用できるのでしょうか。熊本の水資源は、後世に残していくべき財産と考えられていますが、その保全の観点から、水使用量の上限を考えておくべきだと考えますが、県の見解をお知らせください。 以上を環境生活部長に質問いたします。  〔土木部長亀崎直隆君登壇〕 ◎土木部長(亀崎直隆君) セミコンテクノパーク周辺の交通インフラ対策についてお答えします。 この周辺は、多くの企業が立地し、朝夕の通勤時間帯を中心に交通渋滞が発生しています。その対策として、南北方向の交通を分散するため、県と菊陽町が連携しながら、都市計画道路菊陽空港線の整備を進めております。 また、渋滞している交差点を円滑に通過できるよう、交通管理者と連携し、交差点改良と信号制御の見直しに取り組んでおります。 さらに、今回のTSMC進出に伴う新たな交通需要に対応するため、基幹となる道路ネットワークの中から、中九州横断道路の合志インターチェンジへのアクセス道路や県道大津植木線の多車線化など、道路の強化に取り組むこととし、現在、必要な概略設計を行っております。 国が進める中九州横断道路の整備やこれらの取組によって、地域間の人や物の流れを担う道路ネットワークが強化されるとともに、セミコンテクノパーク周辺の交通円滑化が図られるものと考えております。 今後とも、国や地元自治体と連携しながら、半導体産業集積の拠点性を支える道路ネットワークの整備にスピード感を持って取り組んでまいります。  〔商工労働部長三輪孝之君登壇〕 ◎商工労働部長(三輪孝之君) 工業用地の確保についてお答えします。 企業誘致においては、企業の投資ニーズに速やかに対応するため、工業用地の確保が極めて重要です。 そこで、県では、これまでも、一定規模以上の工業団地を整備するとともに、市町村や不動産会社等の民間事業者から情報収集を行いながら用地の確保に努め、企業の立地につなげてきました。 議員御指摘のとおり、JASMの新工場建設地周辺においては、県営工業団地が完売となっています。 このため、さきに公表しましたとおり、菊池市と合志市の中九州横断道路建設予定地沿線に、それぞれ約25ヘクタールの工業団地を令和8年度の分譲開始を目標に整備を進めています。 また、複数の市町村においては、半導体関連企業等の誘致を見据え、工業団地整備の動きが具体化しており、中には県営の新規工業団地より早期に分譲開始することを目指す市町村もございます。 工業団地の整備が間に合わないことなどにより企業立地の機会を逃すようなことがないよう、市町村や民間事業者と連携を密にしながら、スピード感を持って工業用地の確保にしっかりと対応してまいります。 次に、人材の確保と育成の取組についてお答えします。 議員が触れられたとおり、JASMが予定している約1,700人の雇用のうち、約500人が台湾からの赴任者とソニーからの出向者です。また、残りの約1,200人のうち、約700人を新規に採用し、500人程度は人材派遣会社等の外部人材の活用により人材を確保すると伺っています。 JASMは、令和6年末までの操業開始を目指し、随時人材の募集を行っており、具体的な数は公表されていませんが、県内の大学生などに対して、積極的な採用活動を進めています。 一方、同社の進出に伴い、県内の半導体関連企業においても人材の需要は高まっており、人材の確保と育成は喫緊の課題であると認識しています。 このため、県では、知事をトップとする半導体産業集積強化推進本部に専門の部会を設置し、国や大学、高校などの教育機関と連携して、様々な取組を進めています。 まず、人材の確保については、熊本の企業や生活環境の魅力を理解してもらい、熊本に住みたい、熊本で働きたいと感じてもらうことが重要です。 そのため、東京、大阪、福岡を主なターゲットとして、UIJターン就職支援センターによる相談、県内企業紹介等の支援や就職セミナーの開催など、UIJターンの促進に取り組んでいます。また、働く人が安心して働き続けられるブライト企業のPRや円滑な労働力移動のための再就職支援、また、中小企業に専門家を派遣し、企業の採用力向上を図る取組を進めています。 次に、人材の育成についてです。 県立技術短期大学校では、令和6年4月に、半導体関連の新学科を設置し、実践的な技術者を育成するための準備を進めています。また、熊本大学では、先日、新たな学部となる情報融合学環などの設置構想が発表されました。その中で、令和10年度以降、毎年100人を超える人材を半導体関連産業へ輩出することを目指されています。さらに、熊本高専では、半導体の製造や開発を担う人材を育成するため、全国の高専に先駆けて、4月から新科目として半導体工学概論の講義を開始されました。 TSMCの進出効果を最大限に生かし、シリコンアイランド九州復活の中心的役割を担うためには、人材は最も重要な課題の一つです。 今後とも、産学官で構成する熊本県半導体人材育成会議での議論や活動などを生かし、産業界や教育機関と連携を密にしながら、人材の確保と育成に全力を挙げて取り組んでまいります。  〔環境生活部長小原雅之君登壇〕 ◎環境生活部長(小原雅之君) 水の問題についてお答えいたします。 熊本地域の地下水は、水が浸透しやすい土壌に加え、白川中流域をはじめとする農業の営みによる涵養などによって育まれ、県民生活と地域経済の共通の基盤となっています。 この貴重な宝である地下水ですが、長期的には水位が低下傾向にあったため、平成16年から人工的な地下水涵養が開始されました。 このように、地下水を活用しつつも、地下水涵養に積極的に取り組んできたことにより、現在では、地下水位は回復傾向にあります。 JASMにつきましては、本年4月に、地下水の取水量を超える涵養を行うことが公表されました。この涵養が実施されることで地下水量が保たれ、地下水の利用と保全が両立できると考えております。 なお、地下水は、無制限に取水できるものではありません。JASMが地下水を取水するためには、地下水保全条例に基づく県の許可が必要です。 現在、JASMにおいて許可申請に必要な手続である試験取水を行っており、水位低下などの影響が生じないか、県もしっかりと確認しています。 今後とも、条例に基づく許可制度を適正に運用するとともに、関係者と連携し、取水量に見合った地下水涵養にしっかりと取り組み、限りある地下水を守り、県民の皆様が豊かで良質な地下水の恵みを将来にわたって享受できるよう、全力を尽くして取り組んでまいります。  〔濱田大造君登壇〕 ◆(濱田大造君) セミコンテクノパークで働いている方の実に約90%が、通勤手段として自分の車、マイカーを使用しているそうです。多車線化はもちろんのこととして、鉄道やバスなどの公共交通機関の利用を促す政策も同時に推し進めていくことを期待します。 今後予想される半導体関連企業の誘致に際して、工業用地の整備は待ったなしの課題となっています。農業用地から工業用地への区分変更など、難しい問題も絡んでくると考えられますが、関係機関と協議の上、迅速なる対応をお願いします。 人材の確保と育成に関しては、この1年でかなり大きな動きがあったことを実感しております。熊本大学での新学部創設、半導体の人材育成が高専でも始まります。産学官で連携し、さらなる充実をお願いいたします。 水に関しては、多くの熊本県民、そして熊本市民が注目しています。大量の地下水をくみ上げると、水が枯渇することもあり得ますし、予期せぬ場所で地盤沈下が起こることもあります。また、排水により水質を汚染することもあり得ます。 世界的にもまれとも言える熊本の豊かな地下水の在り方が問われています。県に対しては、あらゆる観点から地下水の保全に努めることを求めます。 最後に、戦略ビジョンに関して質問します。 熊本県は、もともと半導体関連企業が多く集まっていた土地柄でした。今回のJASMの工場建設で、日本の半導体復活の声も聞かれますが、冷静に日本が置かれている状況を考えれば、サプライチェーンの機能を強化し、本県をシリコンアイランドとして確固たる地位に高めていくことがより重要であることが見えてきます。 私は、熊本県を、ほかの追随を許さない、アジアで最大のシリコンアイランドにする必要があると考えています。 そのためには、さらに世界に開かれた熊本県をつくっていく必要があると考えています。人材を育てていくのはもちろんのこととして、広く内外から人材を募り、内外から投資を募ることがより重要になってくると考えています。それを実現するには、確かな戦略とビジョンが必要だと考えています。 知事が考えている戦略ビジョンに関して質問いたします。  〔知事蒲島郁夫君登壇〕 ◎知事(蒲島郁夫君) 私は、シリコンアイランド九州の復活のためには、社会情勢の変化、半導体関連産業の変遷及び本県における現状と課題をしっかりと捉えた上で、目指すべき方向性を検討し、明快なビジョンを示すことが重要であると考えています。 そこで、現在、TSMCの進出を契機とし、半導体産業のさらなる集積や新産業創出の波及効果を生み、戦略的に県経済、地場産業の成長に結びつけていくための指針、くまもと半導体産業推進ビジョンの策定に取り組んでいます。 ビジョンの中では、目指すべき姿として、世界に半導体を供給し続ける拠点、半導体人材が集う拠点、さらに半導体を核とした産業創出の拠点としての機能を発揮できる熊本の実現を掲げたいと考えています。 10月には、元東京エレクトロン会長の東哲郎さんをはじめとした産業界や学識経験者などの各分野における国内トップレベルの有識者による懇話会を開催しました。 有識者の皆様からは、切れ目なくつながるサプライチェーンの強靱化に向けては、熊本のみならず、九州やアジアを見据えて考える必要がある、また、大学を活用しながら企業間の連携を活性化することが重要など、グローバルな視点から貴重な御意見を頂きました。 その御意見を基に、半導体産業のさらなる強化や集積、人材の確保、育成、新たな産業の創出の仕組みづくりや半導体の活用によるDX支援など、今後さらに取組の方向性を具体化し、今年度末にビジョンを策定します。 なお、ビジョンの骨子案については、今定例会に御報告させていただきます。 私は、TSMCの進出が決定する以前から、本県の半導体関連企業の集積を生かし、半導体の安定供給を通じて日本の経済の安全保障に貢献したいと申し上げてまいりました。 今回のTSMC進出は、まさに本県への半導体関連企業の集積を加速化し、半導体サプライチェーンの強靱化を図るビッグチャンスです。 そのため、TSMCの進出決定直後から半導体産業集積強化推進本部を設置し、議員御質問の交通インフラや工業団地の整備、人材の育成など、様々な課題にスピード感を持って取り組んできました。 今後とも、TSMCの進出というビッグチャンスを逃すことなく、本県のみならず、九州全体にその効果を波及させ、シリコンアイランド九州の復活につなげ、世界における本県の拠点性を高めてまいります。 そして、半導体産業をはじめ、県内全域の経済成長につなげ、ひいては日本の経済安全保障の一翼を担うこともできるよう、産業界、大学、九州各県とも一体となって全力で取り組んでまいります。  〔濱田大造君登壇〕 ◆(濱田大造君) TSMCは、日本工場を建設するに先立ち、アメリカにも最新の工場を建設中です。アリゾナ州フェニックスに巨大工場を建設中です。生産される半導体は、5から15ナノで、日本のそれよりも微細な半導体です。 最新のニュースによりますと、TSMCは、アリゾナに3ナノの工場も新規で建設するそうです。フェニックスでどのような企業の集積がなされようとしているのか、その情報を集め、参考にしていく必要もあると考えています。 本県を半導体の拠点にしていくためには、半導体の最先端の知識と技術を習得した人材を世界中から広く集めていくことも必要になるでしょうし、また、今後本県へ進出してくるであろう企業に対しては、工場建設用地の確保や交通インフラの整備または補助金、税制面での優遇策などを通じて、どこよりも仕事がしやすいビジネス環境の提案、提供が急務となっています。さらには、水資源の確保など、環境に最大限の配慮をしていくことも求められています。 様々な課題や問題はあろうかと存じますが、皆様とともに、シリコンアイランドとしての熊本、世界に開かれた熊本を目指したいと考えています。 次に、デジタル化、DXの推進について質問いたします。 昨年9月のデジタル庁設置に伴い、本県においてもデジタル化が進んでいます。 令和4年4月には、企画振興部に新たにデジタル戦略局が新設されました。デジタル戦略局は、理事以下デジタル戦略推進課とシステム改革課の2課32名で構成されています。 戦略局では、DXグランドデザインの推進や市町村DXの推進、システム改革の支援、技術動向に対応したデジタル基盤の構築、管理、運用や情報化推進計画などの業務を担い、また、DXの戦略的な推進に関する助言を行う職として、新たにデジタル戦略監を設置し、民間人材が登用されました。 今回の質問に際して、デジタル戦略局の職員の皆様からヒアリングを行いました。多くの発見がありました。 県庁内のデジタル化として、以下の動きがありました。 まず、令和3年度までに、全職員に対してデジタルツールを整備し、令和4年4月から庁内LANの無線化が開始され、令和4年度中に議会棟の庁内LANが無線化され、全職員へデュアルディスプレー用モニターを配備する予定となりました。 その結果、本年度中に、全庁的にデジタルツールやデジタル環境が整い、来年度からは、オンライン会議やリモートアクセスサービスが、これまで以上にスムーズに行うことが可能になります。 また、デジタル戦略局では、オフィス改革も実施しています。その象徴的な改革として、デジタル戦略局では、フリーアドレスの導入を進め、ペーパーレス文化への移行を試みています。 皆さん、フリーアドレスを御存じでしょうか。 今デジタル戦略局では、フリーアドレスを導入したため、職員個人の固定席は、既に廃止されています。これまでの職場では、自分の机や椅子があるのが当たり前でした。しかし、デジタル時代には、職員の決まった机や椅子がない状態、フリーアドレスが一般的になると考えられています。ですから、フリーアドレスでは、管理職の机もないことになります。事実、デジタル戦略局では、課長の席はもちろん、理事の机もありませんでした。また、自分の机がないわけですから、デスクの引き出しは廃止され、私物の置きっ放しもできないことになります。基本的にパソコンさえあればどこでも仕事が可能となるため、固定席は必要なくなるわけです。 そして、全ての情報はデジタル化されていますので、結果として、ペーパーレスが進むことになります。現在は、フリーアドレス化は、デジタル戦略局にとどまっていますが、そんなに遠くない将来、全庁的なものになる可能性があります。 では、そんなデジタル戦略局では、具体的にどんな取組が行われているのでしょうか。 本年、令和4年度の主な取組としては、熊本県市町村DX推進連絡調整会議の設置や市町村へのデジタル化支援専門人材派遣事業、市町村の取組状況を見ながら県職員が個別に訪問して具体的な支援を行う市町村個別支援などがありました。 また、令和2年12月に策定された国の自治体DX推進計画では、令和7年度までの重点取組として、1「自治体の情報システムの標準化・共通化」、2「マイナンバーカードの普及促進」、3「自治体の行政手続のオンライン化」、4「自治体のAI・RPAの利用推進」、5「テレワークの推進」、6「セキュリティ対策の徹底」の6つが掲げられており、デジタル戦略局は、これらを踏まえながら取組を進めています。 このように説明を受けましてもぴんとこないものです。そこで、さらに具体的に説明します。 行政手続のオンライン化に関しては、令和4年度中に、転出届、転入予約の手続に加え、特に国民の利便性向上に資する手続として、子育て関係で15手続、介護関係で11手続、被災者支援関係で1手続、自動車保有関係で4手続の合計31手続がオンラインで対応可能となります。 子育て関連の15の手続は、児童手当などの受給資格及び児童手当の額についての認定請求、児童手当などの額の改定の請求及び届出、氏名変更、住所変更などの届出、受給事由消滅などの届出など15の手続がオンライン可能となります。 介護関係の11の手続は、要介護、要支援認定の申請、要介護・要支援更新認定の申請、要介護・要支援状態区分変更認定の申請など計11手続です。 被災者支援関係では、罹災証明書の発行申請が1件、自動車保有関係では、自動車税環境性能割の申告納付などの4手続がオンライン化されます。 令和4年度中には、以上の手続がオンライン可能になるわけですが、従来どおり、アナログ式、つまり紙で申請する方もいますので、当面、多くの手続で併用が続く見込みです。 社会をデジタル化し、DXを推進していくのは、簡単なように見えて案外とても難しいことが見えてきます。アナログからデジタルへ、改革は、いつの時代も困難を伴います。そもそも、政府の方針が定まっていないから、なおさら状況は困難となっています。 マイナンバーカード一つ考えても、方針が定まっていないことが分かります。政府は、マイナンバーカードの普及に躍起になり、その普及のために、数回にわたりマイナポイントを配ったり、広くCMなどで宣伝活動を行ったりもしました。その結果、現在、ようやく普及率は50%を超えたところです。 しかし、今年10月、政府は突然、再来年の秋、令和6年秋に、現在の健康保険証を廃止し、マイナンバーカードに一本化すると発表しました。現在マイナンバーカードを持ってない人も、再来年秋には、半ば強制的に健康保険証と一体化したマイナンバーカードを所有することになったのです。 マイナンバーカードが普及しなかった大きな理由としては、政府のデジタル化への方針が定まっていなかったことに理由があったのだと思います。方針が定まっていないがため、その必要性への国民の理解も乏しいままであり、また、カードを所有したとしても利便性が低いという問題点が生じていました。そもそも、マイナンバーカードがなくても生活できてしまうのです。つまり、なかなかカードが普及しない理由があったのです。 そもそも、日本は、明治期以降、中央集権型の統治システムを採用し続けています。ですから、デジタル化を推進するなら、どこの国家よりも簡単にできたはずなのですが、実際はそうはなってません。 47都道府県では、それぞれが独自にシステムを開発し、別々のデジタルツールを使っています。同じく、約1,700ある地方自治体も、おのおののシステムを採用し、おのおのでデジタルツールが違います。富士通のシステムを採用するのか、日立なのか、IBMなのか。各省庁も、システムはばらばらの状態にあります。中央集権国家ですので、本来は一つのシステムで済むはずでしたが、実際は、複数のシステムの上に、各自治体、各省庁は運営されてきました。 そういった複雑で複数のシステムを前提に、デジタル化、DXを推進していこうというのですから、大変な仕事になるわけです。 では、質問に入ります。 アナログからデジタルへ、さらにはDXへ、大変難しい仕事です。その対象は多岐にわたります。デジタル戦略局は、どのような方針の下、デジタル化、そしてDXを推進するのか、質問します。また、その結果として、県民生活は、どのように変わるのか、どのように変えていくのか、デジタル戦略担当理事に質問します。 次に、また、県庁は、県民にとりまして象徴的な存在と言えます。県庁の動きは、いつの時代もオピニオンリーダー的なものとなります。 現在、デジタル戦略局が行っているフリーアドレスは、そんなに遠くない将来、どこの会社でも当たり前の風景になっている可能性が高いと言えます。 デジタル化の象徴として、全庁的なフリーアドレスの取組が今後一層必要になってくると考えますが、その見通しに関して、総務部長に質問いたします。  〔理事小金丸健君登壇〕 ◎理事(小金丸健君) 県では、人口減少に伴う様々な地域の課題を解決し、活性化する有効な手段として、デジタル化、DXの推進に取り組んでいます。 本年2月には、くまもとDXグランドデザインを策定し、産学官が一丸となって取り組んでいく方向性を取りまとめました。 グランドデザインでは、実現すべき2つのビジョンとして「産業の発展を共創し県民所得を伸ばし続ける県くまもと」と「ひとを惹きつける快適・安心な生活環境を共創する県くまもと」を掲げています。 ビジョンに掲げた県民所得向上の実現には、例えば、デジタル技術の導入により生産性を向上させたり、蓄積したデータを活用し、新たなサービスを創出したりすることが必要です。 また、快適な生活環境の実現には、例えば医療、福祉、保健に関して、市町村、病院、介護事業者等が保有するデータを連動させて一体的なヘルスケアサービスを提供するなど、個人に寄り添ったサービス創出が必要です。 グランドデザインで描いたビジョン実現には、産学官の連携が欠かせません。 本年6月には、くまもとDX推進コンソーシアムを設立し、現在、300以上の企業、団体等が参加しています。コンソーシアムでは、セミナー等による機運の醸成と会員間のマッチングやデジタルを活用することで課題解決を図る公募型実証プロジェクトなどに取り組んでいます。 また、行政手続のオンライン化、マイナンバーカードの普及促進、情報システムにおける課題への対応など、行政におけるデジタル化やDXにもしっかりと取り組んでいきます。 行政手続のオンライン化については、市町村へ外部デジタル人材を派遣するなど個別支援を行っており、議員御紹介の手続については、今年度中に全市町村でマイナンバーカードを用いたオンライン申請が可能となる見込みです。また、このようなマイナンバーカードの利便性向上や安全性に関する情報発信等により、カードの普及にも積極的に取り組んでまいります。自治体の情報システムの標準化、共通化についても、令和7年度までに全市町村が確実に移行できるよう支援を行ってまいります。 今後、コンソーシアムの成果を県内に横展開し、産学官の取組の加速化につなげるとともに、市町村の取組をしっかりと支援することで、県民の皆様がデジタル化やDXの恩恵を実感できる社会を実現してまいります。  〔総務部長平井宏英君登壇〕 ◎総務部長(平井宏英君) フリーアドレス制につきましては、県がこれまで取り組んできた行政文書の電子化を加速するだけでなく、組織や役職を超えたコミュニケーションを活発化し、ひいては組織の生産性の向上にもつながると考えております。 本県では、令和4年度に、デジタル戦略局において試行的に導入しました。具体的には、固定席を廃止し、ミーティングスペースや集中して業務を行うブースを設けることなどにより、柔軟な働き方ができるようにしました。その結果、職員間のコミュニケーションが活発化し、生産性の向上も図られております。 このように、フリーアドレス制には、様々な場面に応じて執務環境を整備できるという特徴があります。 その特徴をさらに生かしたフリーアドレス制を、令和5年度から稼働する防災センターの危機管理防災課、消防保安課、県央広域本部の農林部及び土木部に導入いたします。 具体的には、これまで職員数と同数だった固定席を約2割削減します。また、デジタル戦略局での取組に加え、図面などをペーパーレス化できるよう、設計図書等の閲覧に対応した大型モニターを設置するほか、来客スペースと執務スペースをゾーニングして、セキュリティーと業務効率に考慮した適切なレイアウトにするなど、フリーアドレスの効果をより高める試みを取り入れております。 県としましては、今後、これら様々な部署で実施する試行的取組の効果検証を行いながら、全庁的な展開について検討してまいります。  〔濱田大造君登壇〕 ◆(濱田大造君) デジタル化、そしてDXがうまくいくかどうかは、意識を変えていけるかどうかにかかっているのだと考えています。県職員の意識、試みが社会を変えていく可能性が高いと思ってます。デジタル戦略局の数々の取組は、時代の最先端を確実に走っているということを実感してます。 コロナ禍でのテレワークで意識が変わりました。フリーアドレス導入でまた意識が変わっていくんだと思います。県職員さんにフリーアドレスが進めば、最終的には知事の席もなくなるんですかと質問しましたら、職員さんは、えっと言いまして、答えに窮しておりました。 今後のますますの取組に期待いたします。 次に、県立高校における遠隔授業の普及について質問します。 平成27年4月より、高等学校の全日制、定時制課程における遠隔授業が正規の授業として認められるようになりました。制度化に際しての大きな改善点は、制限や要件を満たしつつ、遠隔授業が対面により行う授業と同等の教育効果を有すると判断されたとき、受信側に当該教科の免許状を持った教員がいなくても、同時双方向型の遠隔授業ができるようになった点にあります。 分かりやすく説明すれば、以下となります。 A高校には美術の免許を持った先生がいますが、B高校には美術の先生がいませんでした。そのため、B高校に通う生徒たちは、美術の授業を選択することができませんでした。 しかし、法改正により、A高校の美術の先生が行っている授業を、遠隔授業によって、B高校の生徒も美術の授業を正規の授業として受けることが可能になったのです。この制度によって、県内どこの県立高校に通っていても、基本的に全ての教科の履修が可能になったのです。 また、新型コロナが始まって以降のこの3年間で、オンラインの活用に関する需要は高まり、その技術は飛躍的に伸びたと言えます。また、オンラインによる学習支援に関する県民の理解も進みました。 現在、県内には3つの分校を含む50の県立高校が存在しますが、学校によっては、地理、歴史や理科、芸術などの教科において、未開講の教科、科目があります。もちろん、それぞれの高校は、在籍する生徒数やクラスの数も違っており、一概には比較できないところもあります。また、学習指導要領や学校の教育目標、在籍する生徒の実態などによって、開設する教科、科目を決定しているとも思います。 しかし、県立高校のさらなる教育の充実を考えるなら、県内どこの学校に通っても、全ての生徒が希望する教科、科目を受けることができる教育環境を提示していく必要性があると考えています。 それでは、質問に入ります。 遠隔授業を行うには、様々な制限や要件を満たす必要がありますが、現在、県立高校では、COREハイスクール事業という遠隔授業に関する取組を行っていると伺っています。このCOREハイスクール事業の現状や成果と課題について教育長にお尋ねします。 また、COREハイスクール事業で取り組んでいる遠隔授業のさらなる拡大も考えられますが、県立高校における遠隔授業の今後の方向性について教育長に質問します。  〔教育長白石伸一君登壇〕 ◎教育長(白石伸一君) まず、COREハイスクール・ネットワーク事業の現状と課題についてお答えいたします。 県教育委員会では、令和3年度から3年間、文部科学省の指定を受け、県立高校において、遠隔授業に関する調査研究を行っています。 具体的には、第一高校、小国高校、牛深高校、球磨中央高校、県立教育センターを実証機関とし、現在、数学、地理、英語、商業の教科、科目で、年間を通じて遠隔授業を行っています。 昨年度に行った遠隔授業に関する生徒アンケートでは、他校の生徒と一緒に切磋琢磨できて、自分のモチベーションの向上につながっている、自分の学校では学べない科目を学習でき、新鮮で楽しかったという肯定的な意見が多いという結果が出ています。 一方で、遠隔授業を実施するためには、送信側と受信側の生徒を合わせて40名以下とすることや受信側の教室にも教員を配置することなど、文部科学省から示されている要件を満たす必要があります。 また、各学校の教育課程や時間割の共通化を図るなど、学校間の連携体制の構築や遠隔授業に対応した配信側教員の指導スキルの向上、さらには新たな科目の開設に伴う教員の負担などが課題として挙がっています。 次に、県立高校における遠隔授業の今後の方向性についてお答えします。 来年度指定最終年度を迎えるCOREハイスクール・ネットワーク事業では、現在実施している科目に加え、公民や音楽などでも実施し、遠隔授業科目の拡大を予定しています。 今後、COREハイスクール・ネットワーク事業の成果と課題を検証しながら、県立高校における遠隔授業の普及に努め、教育活動のさらなる充実に取り組んでまいります。  〔濱田大造君登壇〕 ◆(濱田大造君) 最新のテクノロジーを使って授業ができるということは、本当すばらしい取組だと思います。 遠隔授業が充実すれば、県内どこの高校に通おうが、最高の高等教育を受ける条件が整うことを意味します。このことは、教育の地域間格差の解消も意味しています。今後の県の取組に大いに期待します。 最後に、宿泊税について質問いたします。 新型コロナが始まって、やがて3年になろうとしています。3年がたち、現在、ほとんどの先進国で新型コロナに対する規制が緩和され、海外旅行が可能となりました。また、今年に入ってからの円安効果で、多くの外国人旅行者が日本に来るのを楽しみにしているとされています。本県でも、外国人観光客の姿が見られるようになりました。 外国人旅行者にとっては、円安は大きな恩恵と言えます。今後、さらなるインバウンドの増加も予想されています。 そこで、宿泊税について質問します。 既に、九州では、複数の自治体で宿泊税を導入済みです。 例えば、福岡県では、福岡県が福岡市と北九州市と共同で宿泊税を導入済みです。福岡市では、宿泊料金が2万円未満の場合、1人1泊当たり200円の宿泊税を徴収しています。うち、県税は50円となります。宿泊料金が2万円以上の場合、宿泊税は500円となり、県税は同じく50円となります。 来年4月から導入予定の長崎市では、宿泊料金が1万円未満の場合、宿泊税は100円、1万円以上2万円未満の場合、200円、2万円以上の場合、500円の宿泊税となっています。 そのほかにも、東京都や大阪府、京都府京都市や石川県金沢市や北海道虻田郡倶知安町でも、宿泊税は導入済みです。 今、複数の自治体で、コロナ後のインバウンドの動きを見据え、宿泊税の導入の検討の動きが再び見られるようになりました。 宿泊税の考え方としては、観光客の皆様にも、観光行政や観光地の交通インフラの整備または観光資源の維持管理に関する費用の一部を御負担していただくというものです。宿泊税は、新たな税源として御理解いただける税の一種だとも考えられています。 現在、本県では、宿泊税に対する取組はどうなっているのか、観光戦略部長に質問いたします。  〔観光戦略部長原山明博君登壇〕 ◎観光戦略部長(原山明博君) 宿泊税についてお答えします。 宿泊税については、議員御紹介のとおり、現在、3都府県4市1町で導入されており、来年4月からは、新たに長崎市で導入される予定です。 これらの自治体では、観光資源の新たな魅力創出やインバウンド増加に伴う受入れ環境の整備など、いずれも観光振興を図る目的で宿泊税が導入されたものと承知しています。 本県においても、令和2年10月に観光戦略部を設置し、新たな観光スタイルにより観光立県を実現することを基本目標に、観光振興に力を入れています。 この取組を充実強化し、持続可能な観光地域づくりを進めていく上で、宿泊税の導入は、観光振興の自主財源を安定的に確保するために有効な手段と考えられます。 一方、県内の観光産業は、熊本地震、新型コロナ、令和2年7月豪雨災害の影響により、大変厳しい状況に置かれており、現在、旅行助成事業による需要喚起等により体力回復を図っている段階です。 こうした中での宿泊税の導入は、旅行者のマインド低下、徴税に係る宿泊事業者の負担増加など、懸念される面があります。 このような現状を踏まえれば、直ちに宿泊税が導入できる状況ではないと考えますが、今後の本県観光産業の回復状況や既に導入している自治体の成果と課題を把握しながら、研究を行ってまいります。  〔濱田大造君登壇〕 ◆(濱田大造君) 現在、円安基調が続いています。円安の恩恵を受けている外国人観光客の皆様にターゲットを絞って宿泊税を徴収する方法もあるはずです。制度設計は行政にお任せしますが、税源が限られる中、あらゆる取組をすべき時期だと考えています。 以上で通告どおり全ての質問が終わりました。本当に御清聴ありがとうございました。(拍手) ○副議長(髙野洋介君) 昼食のため、午後1時10分まで休憩いたします。  午後0時9分休憩    ――――――○――――――  午後1時9分開議 ○議長(溝口幸治君) 休憩前に引き続き会議を開きます。 髙木健次君。  〔髙木健次君登壇〕(拍手) ◆(髙木健次君) 皆さん、こんにちは。自由民主党・合志市選挙区の髙木健次でございます。昼からの最初の質問になりますので、この時間帯、大変眠くなります。どうか、居眠りまでは仕方ないにしても、いびきだけはかかないでいただきたいと。私のモチベーションも下がりますので、よろしくお願いしておきたいというふうに思っております。 さて、1年ぶりの質問になりますけれども、今日も、家内から、赤飯を炊いていただいて、それを食べてここに登壇をしておりますけれども、いかんせん、まだまだ未熟者で緊張をいたしております。最近、知事の答弁が、ちょっとこう物足りないような感じがしますので、今日は、水を得た魚のように元気な答弁を知事から頂ければありがたいというふうに思っておりますので、執行部の皆さん方、よろしくお願いしておきたいと思います。 今日は、5問質問を用意してまいりましたけれども、通告順に従い、質問を始めたいと思います。 まず初めに、県営スポーツ施設の整備の在り方についてお尋ねします。 今年の本県のスポーツの話題を振り返りますと、サッカーでは、ロアッソ熊本が、Jリーグ参戦15年目で、初めてJ1昇格をかけたプレーオフに進出しましたが、惜しくもあと一歩のところでかないませんでした。バスケットボールでも、熊本ヴォルターズが、B1昇格を目指し、今シーズンも健闘しています。野球の火の国サラマンダーズは、九州アジアリーグ2連覇と日本独立リーググランドチャンピオンシップ初優勝を果たしました。 また、プロ野球では、熊本県出身の東京ヤクルトスワローズの村上宗隆選手が、今シーズン56本の本塁打を放ち、日本選手歴代最多シーズン本塁打記録を更新、歴代最年少での3冠王も獲得するなど、数々のプロ野球史に残る記録を打ち立てました。来年3月に開催されるワールド・ベースボール・クラシックでも、侍ジャパンの中心打者として活躍が期待されます。昨年は、くまもと夢づくり賞を受賞、今年は、最年少での県民栄誉賞の受賞も決定し、今月28日に授与式が予定されております。 スポーツは、県民に元気を与え、地域への経済効果をもたらします。その最大化を図るためには、受皿となる施設の充実が欠かせません。 国は、今年3月に策定した第3期スポーツ基本計画の中で「スポーツの成長産業化」を掲げ、地域経済の活性化の基盤となるスタジアムやアリーナの整備を推奨しており、実際に全国ですばらしい施設の建設が進んでおります。 例えば、九州内でも、佐賀県では、アリーナを含むスポーツ施設の整備が進められており、また、長崎県では、民間主導によるアリーナ、スタジアム、ホテルなどの複合的施設の整備が行われています。 ところが、本県においては、その経済効果を最大化するための施設の整備が不十分な状況にあります。 ただ、スポーツ施設の整備に当たっては、巨額の投資が必要になります。例えば、野球場を建設する場合、球場の規模にもよりますが、100億円程度の建設費が必要になると見込まれます。 私は、今後のスポーツ施設の整備を実現するためには、外部から財源を獲得し、自治体の負担をできる限り抑えることがますます重要になってくると思います。 具体的方法として、国のスポーツ施設整備に係る支援制度の活用やPFI手法など、官民連携による整備の方法が挙げられますが、特に注目したいのが、いわゆる企業版ふるさと納税の活用です。 これは、地方公共団体が行う地方創生の取組に対する企業の寄附について法人関係税を控除する制度で、税額が最大9割控除され、企業にとっても、社会貢献を通じた法人のイメージアップや知名度の向上など、メリットのある制度です。 例えば、群馬県の太田市では、アリーナを新設する際に、この企業版ふるさと納税を活用し、建設費約78億5,000万円に対し、企業版ふるさと納税で40億円、さらに国の地方創生拠点整備交付金で10億円の財源を確保することに成功しております。 スポーツ施設の整備に当たっては、多額の費用を要し、検討から整備を行うまでには長い時間も要します。本県の老朽化した複数のスポーツ施設を短期間で整備することは、かなりハードルが高く、財政状況が厳しいことも理解しています。しかしながら、この企業版ふるさと納税で寄附を募るなど、県の財政負担の抑制のためには、様々な手法があり、工夫する余地があると考えます。 既に、令和2年3月に、県と熊本市におけるスポーツ施設のあり方検討会議に関する議論に基づく課題が整理されてから、はや3年近くがたとうとしています。 そこで質問ですが、その報告を踏まえた上で、県営野球場や武道館など県営スポーツ施設の整備の在り方について、蒲島知事のお考えをお尋ねします。  〔知事蒲島郁夫君登壇〕 ◎知事(蒲島郁夫君) 今年は、3冠王に輝いた東京ヤクルトスワローズの村上選手、J1参入プレーオフ決定戦に進出したロアッソ熊本、バドミントン世界選手権優勝の山口選手など、本県にゆかりのあるスポーツ選手やチームが県民に多くの夢や感動を与えてくれた1年でした。 また、その盛り上がりに呼応して、野球場やアリーナ、スタジアム等のスポーツ施設の整備を期待する県民の声が多く聞かれるようになりました。 野球場等のスポーツ施設は、周辺産業への経済波及効果や雇用創出も期待でき、地域活性化の起爆剤となり得る潜在力を有しています。 スポーツ施設の整備の在り方については、私の4期目のマニフェストにも掲げており、現在、施設の建設や運営に係るコスト、老朽化の状況、経済波及効果など様々な視点から施設の評価、分析を行っています。私の任期中には、その方向性を取りまとめてまいります。 本県では、熊本地震、令和2年7月豪雨という2つの災害への対応等により、今後公債費の増加が見込まれるなど、中長期的な財政運営はより厳しさを増すと認識しています。 その観点から、方向性を取りまとめるに当たっては、PFI、また、企業版ふるさと納税の活用など、官民連携の取組が非常に重要であり、この観点からもしっかりと検討を進めて、任期中には方向性を示したいと思います。  〔髙木健次君登壇〕 ◆(髙木健次君) 知事から答弁を頂きました。 今年は、本県にゆかりのあるスポーツ選手やチームが県民に多くの夢や感動を与えてくれた、また、企画振興部が中心となり、様々な視点から施設の整備、分析を行っている、また、知事の任期中には、スポーツ施設の整備の在り方について、方向性を取りまとめていくという答弁だったと思います。 私が先ほど申し上げました熊本県と熊本市が取り組んだ検討委員会ですね。この中の最終的な報告が出てきましたけれども、野球場は、やっぱり知事も言われたと思いますが、これから整備をしながらやれば25年間は使えると。また、武道館もそうです。25年整備をしていけば使えると言われました。 ただ、しかし、この中には、野球場は、熊本城や藤崎台のクスノキ群の適切な保護、保存によって、掘削を行う改修等が制限される場合には、改修工事をするために施工方法の検討が必要となり、状況によっては、改修が困難、また、施設の使用に支障を来すということで、附帯施設及び駐車場の整備等については、現在地や周辺に拡張できる土地がないことから、問題や課題は引き残っていく。 また、武道館にしてもそうです。現在の武道館は、熊本市の条例によって、あそこで増築、また、建設というのはできないんですね。非常に、武道館のほうも、6万8,000人でしたかね、署名を出して、請願書も出ております。これは大分前だったというふうに思っております。球場のほうも27万人の署名を集めた、それはもう何年前でしょうかね、7~8年ぐらい前だったと思いますけれども、私がこの質問に立ったのが24年からですから、もう10年を経過しております。 そういう中で、いろいろと議論をされて、こういう報告が出てきたんですけれども、いずれのこの――取り立てて言えば、この野球場、また、武道館、やっぱりもうそろそろ限界じゃないのかなということで、こういう報告になったというふうに思っております。 また、先ほど村上選手の話もしました。知事は、夢づくり大賞のときに村上選手とも対談をされて、いろいろな各報道で、村上選手は、知事、球場を造ってくださいと、子供たちの夢の実現のためにも球場を造ってほしいとか、古くなってますよという要望を聞かれて、知事も、真剣に検討していかないといけないのかなというような、報道でこういう対談も出ておりましたけれども、各方面から、このことについては、非常に要望が強いといいますか、造ってほしいと、もう限界だろうというようなところまで来てるんです。ですから、これは、知事、どうか実現に向けてやっていただきたいと思います。 公明党の城下代表も、3月の代表で、県営球場の移設についてということで質問をされております。 そういうことで、いろいろな方から、この辺の指摘がされておりますので、できれば早い段階で、特に、知事の任期があと1年、もう半年切りましたよね。私は、蒲島知事に、この問題については、きちっとした方向性をつけていってほしいと、知事だからできる仕事だというふうに思っておりますので、1年半を切ったこの任期の中で、知事がしっかりと結論を出していただければ、私も安心して――この件については思いができるというふうに思っております。知事、どうかその辺はよろしくお願いをしたいと、知事、よろしくお願いしたいと思います。 そういうことで、これは本当に今がベストタイミングではないのかなというふうに思っておりますので、再度知事にお願いを申し上げまして、質問に入りたいというふうに思います。 次に、農業と半導体関連産業立地との両立に向けた取組についてお尋ねします。 昨年11月9日に、TSMCが国内初となる新工場を菊陽町に建設することを発表してから1年が経過しました。世界的に半導体不足が叫ばれる中、半導体受託生産最大手のTSMCが国の後押しを受けて熊本に進出するというニュースは、瞬く間に全国を駆け巡り、県内経済界はもとより、国内の半導体関連企業に大きなインパクトを与えました。 新工場の建設現場には、これまで見たことのないような巨大クレーンが立ち並び、過去に例を見ない急ピッチで、昼夜を問わず建設工事が進められています。不夜城のような工事現場から放たれるこうこうとした光は、我が国の経済安全保障を担う国家的なビッグプロジェクトであることを物語っています。 TSMCの進出決定を受け、今年3月には、東京応化工業が菊池市へ、9月には、富士フイルムとジャパンマテリアルがそれぞれ菊陽町と大津町へ投資、進出することを決定しています。さらに、来年春には、東京エレクトロン九州が合志市の自社敷地内に新棟建設を予定するなど、TSMCが進出する周辺の市町では、企業の投資、進出が相次いでいます。 こうした半導体関連企業の本県への進出の動きは、2024年末までの操業開始に向けて、今後ますます活発になっていくものと期待をしております。 一方で、企業の旺盛な進出意欲に対し、それに応えられるだけの工業用地が不足しているという話を聞いています。先日報道された熊本銀行の調査によれば、菊陽町へ進出を希望した企業のおよそ8割が、土地が確保できないといった理由で、進出を断念したとのことでした。その多くは、大津町や合志市、菊池市まで選択肢を広げて検討しているとのことで、少しはほっとしておりますが、やはりまとまった用地の確保が課題となっているようです。 県では、県営工業団地の整備を進められていますが、盛り上がりを見せる企業の進出意欲の全てに対応するのはなかなか難しいと思います。 TSMCが進出する菊陽町や私の地元の合志市をはじめとする周辺地域には、多くの優良農地が広がっています。これらの農地を維持していくために、農業振興法や都市計画法において厳しい土地利用規制が定められており、規制を解除するための手続に時間を要します。 もちろん、この農地を守っていくことも重要です。優良農地を守りつつ、TSMC進出のチャンスを生かすため、県は、節度を持った規制の解除について検討していくべきではないでしょうか。 また、操業開始が迫る中、民間企業の動きに対応できるよう、スピード感を持った用地確保が求められています。 知事も、TSMCの進出効果を最大化するため、農業と工業の両立を目指すような広い視点でグランドデザインを目指した検討を行うよう、関係部局に指示されたと伺っています。 そのためには、迅速かつ円滑な土地利用調整を進める観点から、市町村を後押ししていくことが必要だと考えますが、県としてどのような対応方法を考えられているのか、知事にお尋ねします。  〔知事蒲島郁夫君登壇〕 ◎知事(蒲島郁夫君) TSMCの進出は、熊本の強みである半導体関連企業の集積を生かし、日本の経済安全保障の一翼を担っていくという本県の目標に貢献するものであり、本県にとって、かつてないビッグチャンスです。 一方で、全国有数の農業県である本県にとって、食料の安全保障に貢献していくことも、とても重要です。 議員御指摘のとおり、この両者のバランスを取りながら、限りある土地をいかに有効に活用していくかは喫緊の課題です。このため、私は、農業と工業の両立を目指す広い視点を持った対応が必要だと考えています。 農業の振興と企業立地促進の両立を図るために、農地の集団化や農業の効率化に支障がないよう、企業や住宅を農地の基盤整備が行われていない区域等に集約、誘導し、土地利用規制に係る各種許認可にスピード感を持って対応することが重要です。 そのためには、農村産業法や地域未来投資促進法など特例法の活用が有効です。 例えば、農業と産業の均衡ある発展などを目的とした農村産業法では、市町村が実施計画を策定することで、計画に定めた区域において農振除外や農地転用の特例が認められており、企業などの集約、誘導を図ることが可能となります。 そこで、半導体関連企業の集積やそれを支える住宅団地の整備を可能とするため、土地利用調整に取り組む市町村を支援すべく、まず、庁内に部局横断的な半導体拠点推進調整会議を年内に設置いたします。 この調整会議を通じて、市町村に特例法の活用を働きかけるとともに、都市計画法など、ほかの法令手続も含めた相談、調整を一元的に受け付け、必要な助言を行います。 さらに、農振除外と併せて、市街化調整区域における地区計画など、ほかの法令の手続を並行して進めるなど、県と市町村が連携して手続のスピードアップを図ります。 あわせて、農政部局や企業誘致部局、都市計画部局など市町村の関係職員を対象に、農村産業法など特例法の活用や手続期間短縮のための研修会を開催するなど、市町村における迅速かつ円滑な土地利用調整の取組を積極的に支援していきます。 また、TSMCが進出する周辺地域以外の市町村も含めて、その効果を県内全域に波及させるため、市町村の期待や懸念、取り組みたい施策等について、年明けから県内全市町村と意見交換を行ってまいります。 このような方針の下、100年に1度のビッグチャンスとも言えるTSMC進出の効果を最大化できるよう、農業と工業の両立が図られたグランドデザインを目指し、しっかりと取り組んでまいります。  〔髙木健次君登壇〕 ◆(髙木健次君) 知事から答弁を頂きました。 農業と工業のバランスを取りながら、限られた土地をいかに有効に活用していくかは喫緊の課題、また、いろいろありましたけれども、そこで、庁内に部局横断的な半導体拠点推進調整会議を年内に設置して、市町村に特例法の活用を働きかけていくというようなことをやるということです。さらに、農振除外と併せて、市街化調整区域における地区計画など、ほかの法令手続を並行して進める、手続のスピードアップを図るということでございます。 TSMCの進出効果を県内全域に波及させるために、市町村の期待や懸念、取り組みたい施策など、年明けから県内全市町村と意見交換を行う、これからのしっかりとしたグランドデザインを目指していくということでありますが、先般、2~3日前、昨日でしたかね、肥後銀行の頭取、笠原さんですかね、もう何といいますか、会見で、TSMCが進出することで、非常に熊本県が景気がよくなっていると、物価指数とかなんとかあれしても、1.5%ぐらいのアップになってつながっているという大変ありがたい分析を頂きました。 その中でやっぱり指摘されたのが、だけれども、TSMCに入ってきたい半導体の各会社が、土地がなければどうにもならないということで、やっぱり何としても、その工業関連施設が、半導体関係の人が入ってくるためには、土地をやっぱり早急に手当てをしてやらなければならないと。非常に、何といいますか、ポイントをついたコメントをされておりましたけれども、そのとおりだと思います。 あそこは、本当に市街化調整区域で、優良農地として、ずっと平たんなところで、場所もいいところに残ってきましたけれども、これも一つは調整区域の恩恵だったのかなと思いますけれども、ただ、こういう状況で、熊本県が、日本が、国にやっぱり経済の安全保障で、このTSMCという会社をもって打ち出していくシリコンバレー構想は、何としても、やっぱりこれを成功させなければならないということで、そのためには――あそこは国営のかん排事業等も入っております。非常に手続上難しい部分もたくさんあるかと思いますけれども、これはやっぱり市町村の一つは役目でしょうけれども、仕事でしょうけれども、市町村だけではなかなか大変だろうと思います。職員の手も足りない。そういうことで、いろいろな手続にもやっぱり県のいろいろな指導を伺いながら進めなければ、なかなか簡単にはいかない部分はあるのかなというふうに思っておりますので。 ただ、県も、ただその話を受けるだけではなくして、積極的に、市町村関係に、やっぱりいろいろなことを教えたり、指導をしたり、そういう、何といいますか、連携を持って取り組んでいっていただきたいというふうに思っておりますので、ここはしっかりと県の皆さん方の幹部の人たちにもお願いしておきたいというふうに思っております。 昨日、私も、大津からちょっと帰りに、夜、TSMCの工場の近くを通りました。今もやっぱりこうこうとした明かりがついて、そして建物が建つ速さ、びっくりしました。もう7階、8階までどんどんできてるんですね。本当に、4~5年かかるような工事が急ピッチで国のプロジェクトということで進んでおりますけれども、やっぱり県も、その国のプロジェクトに関連して県のプロジェクトをつくって、やっぱり全面的にいろいろな諸課題、諸問題には取り組んでいただけたらありがたいなというふうに思っております。それは蒲島知事が一番よく分かっておられることだろうというふうに思いますので、ただ、これから大変そういうTSMC関係で仕事も増える、いろんな問題、課題も出てくるというふうに思いますけれども、しっかりとその辺は対応をいただけたらありがたいというふうに思っておりますので、どうぞよろしくお願いを申し上げたいと思います。 次に、渋滞・アクセス対策における基幹道路網整備についてお伺いします。 昨年、世界最大手の半導体企業であるTSMCの熊本進出が決定しましたが、既に現地では、クレーン車などの大型の重機が多数動いており、これまでに類を見ない大規模な工事が異例のスピードで進められております。 また、TSMCの熊本進出を機に、県北地域では、半導体関連企業の進出が相次いでおり、生産拠点の集積により、生活や経済の発展につながるとして、地元では大きな期待が広がっています。 しかしながら、このような企業集積に伴い心配するのが、これまでの議会質問で何度も取り上げてきました私の地元である熊本都市圏北部地域の道路ネットワークの整備です。 昨年11月の本会議で、私は、TSMCが進出するセミコンテクノパーク周辺では、既に朝夕の通勤時間帯を中心に交通渋滞が常態化しており、TSMCの工場が稼働することにより、多くの従業員が増えることで、渋滞が深刻化するのではないかと心配する声もあり、周辺道路の整備について質問をいたしました。 その質問では、セミコンテクノパーク周辺の渋滞緩和対策として、JR豊肥本線をまたぐ南北方向の道路となる都市計画道路菊陽空港線の整備に取り組んでおられるが、地元では、その菊陽空港線がつながる県道大津植木線及び大津西合志線の渋滞に拍車がかかるのではないかと心配され、これらの道路の4車線化に大きな期待が寄せられていることも申し上げて、現状の把握や検討をお願いしました。 また、セミコンテクノパーク周辺の渋滞解消の鍵を握っているのが、中九州横断道路の早期整備であると考えて、セミコンテクノパークから合志インターチェンジへのアクセスについても、しっかりと検討するよう要望いたしました。 その後、執行部において様々な検討が行われ、今年7月に開催された知事をトップとする半導体産業集積強化推進本部会議において、新たな交通需要に対応する取組として、将来の基幹となる道路ネットワークの中から、1つ、主要地方道大津植木線の多車線化の概略設計に着手すること、2つ、中九州横断道路合志インターチェンジのアクセス道路の概略設計に着手すること、また、3つ目として、国道387号須屋付近の道路計画の検討に取り組んでいくことが方針として示されました。 議会質問の中で検討をお願いしていた大津植木線と合志インターチェンジアクセス道路の2か所が、事業化を見据えて計画を具体化する概略設計に着手されたということで、スピード感を持って進めていただいたことに感謝いたしております。 一方、国道387号については、合志市須屋付近を優先して道路計画の検討に取り組んでいく方針が示されましたが、現時点では、具体的な道路整備の内容や方向性などは示されておりません。 国道387号の須屋付近は、大型ディスカウントストアをはじめ、多くの商業施設や飲食店、医療施設などが立ち並び、これらの施設から国道への車の出入りもあって、特に交通量が多い地域です。また、県道熊本菊鹿線と交差する須屋交差点から菊池方面に向けては、車線数も4車線から2車線と少なくなっており、日常的に渋滞が発生している箇所であります。さらに、国道387号と九州縦貫自動車道が交差する付近では、縦貫道の側道から国道へ進入する車や国道を横断して通り抜ける車も多く、交通の流れを悪くしています。 今回、このように渋滞が著しい須屋付近の整備は、都市圏北部地域の交通円滑化に向け、効果的で必要不可欠な取組なので、事業化に向けて、一日も早く計画を具体化する必要があると考えます。 そこで、交通円滑化の早期実現につながる国道387号須屋付近の道路整備について、具体的な取組と今後の進め方について土木部長にお尋ねします。  〔土木部長亀崎直隆君登壇〕 ◎土木部長(亀崎直隆君) 国道387号須屋付近の道路整備についてお答えします。 TSMC進出を契機とした、さらなる企業集積に伴う交通需要に対応するため、熊本都市圏北部の基幹道路となる国道387号については、須屋付近を優先して道路計画の検討を行っております。 今でも渋滞が発生している須屋付近につきましては、将来の交通需要を見据えた4車線化やこれに伴う交差点改良など、抜本的な対策が必要であると考えております。 そこで、現在、国道387号が九州縦貫自動車道と交差する部分について、道路管理者であるNEXCO西日本と協議を重ねております。 具体的には、自動車道の路面直下を立体で交差する構造や高速通行に影響を与えずに施工する方法などについて検討を行っております。 今後、事業化に向けて、地形や沿道の土地利用状況などを踏まえながら、2車線から4車線化への道路拡幅等を具体的に検討する概略設計につなげていきたいと考えております。 引き続き、早期に事業着手できるよう、スピード感を持って取り組んでまいります。  〔髙木健次君登壇〕 ◆(髙木健次君) 亀崎土木部長から答弁を頂きました。 大変、387号線について画期的な答弁を頂いたような感じでおります。もう本当に、この須屋周辺、渋滞がひどいことになっております。朝夕、本当に時間帯によらなくても渋滞をして、住民の生活に支障を来しているというような状況でもあります。 ここが、鶴羽田といいますか、飛田バイパスから来て、ハローデイというところから4車線が2車線になっているんですね。それをちょっともう1キロぐらい入ってくると、皆さん御承知のとおり高速道路が走っておりまして、その下にトンネルですね。立体交差になってますけれども、2車線しかないんですね。だから、これが一つのボトルネックにもなっているのかなと。その周辺にやっぱり交差に出るところが何か所かありますので、非常にこの辺でも渋滞をしているということで、今の土木部長の答弁では、西日本NEXCO、高速道路関係とこのトンネルを掘られないか、片側2車線、4車線化ということで、場所はどうなるか分かりませんけれども、私のこれはもう推測ですけれども、少し10メーターかどのくらいか離して、もう1本トンネルを掘る。 ただ、高速道路の下を通す事業ですから、非常に技術もいろいろな問題も出てくるのかなと思いますけれども、そこは、土木部長、しっかりこれからも西日本NEXCOと協議をして、何とかこの片側2車線、4車線化にしていただければ、非常にそこからまた御代志の交差点までの道路の改良に大きくつながってくるというふうに思っておりますので、ぜひとも、この須屋付近の渋滞解消に向けて、高速道路の下を穴をもう1か所掘るという計画で、これもできるだけ早くしないと、やっぱりTSMC関係で、非常にこの辺も関連して渋滞がひどくなるというふうに思っておりますので、くれぐれもこの辺をお願い申し上げまして、次の質問に入りたいと思います。 次に、児童虐待防止対策について質問します。 私には、今年、ひ孫が2人増えまして、誠にめでたくも6人になりました。近所に住む子は、ほぼ毎日遊びに来ては食事を共にし、お風呂に入れるのも私の役目であり、かわいくて仕方がありません。全ての子供はいとおしい存在であるとともに、日本の将来を担う大切な存在でもあり、国の宝物だと思っております。 しかしながら、残念なことに児童虐待は後を絶ちません。今年9月に厚生労働省が発表した報告書によると、全国の児童相談所が対応した令和3年度の児童虐待相談対応件数は、前年度から2,000件以上増え、速報値で20万7,659件と、統計を始めて以来、31年連続で最多を更新しました。 また、熊本県においては、令和3年度の児童虐待相談対応件数は2,352件と、前年度から78件減少しているものの、過去2番目に多く、高止まりしている状態です。 さらに、全国では、悲惨な子供の虐待死が後を絶たず、毎年のように事件が起きています。 皆さんも御承知のとおり、昨年の8月には、大阪府摂津市で、3歳の男の子が、同居していた母親の交際相手から熱湯をかけられて亡くなるという何とも痛ましい事件が起きました。また、今年6月には、大阪府富田林市で、2歳の女の子が長時間放置されたため、熱中症で死亡し、祖母と同居人が逮捕されるという悲惨な事件も起きました。 私は、このようなニュースを見るたびに、非常にショックを受け、涙が止まらなくなります。今でも、思い出すだけで涙が出そうになり、とてもつらく悲しい気持ちになります。 どうして毎年のように虐待死が起きるのか、どうしてこのような悲惨な事件を止めることができなかったのだろうかと残念で仕方がありません。これらの事件は、発生前から自治体などの関係機関がリスクを察知していましたが、結果として虐待死を防ぐことができませんでした。 一方、県内に目を向けると、今年10月に、益城町で、母親が、僅か2歳の子供にヘアアイロンを複数回押しつけてやけどをさせた疑いで逮捕されるという事件も起きました。また、先月には、玉名郡で、父親が、小学校の息子の背中を蹴ったり体を洗濯ばさみでつかんだり、全治1か月のけがを負わせた疑いで逮捕されるという事件も起きています。さらに、先週、宇城市で、母親が、3歳の息子の腹部や腰付近を数回足蹴りする暴行を加え、止めに入った17歳の高校生の息子を包丁で脅した疑いで逮捕されるという事件も起きています。 このように、県内において重篤な虐待事案が発生しており、大変痛ましく思っています。 このような状況の中、子育て世帯に対する支援の体制強化などを行うため、本年6月に児童福祉法が改正され、令和6年度から、全ての妊産婦や子育て世帯からの相談に応じるこども家庭センターを市町村に設置することが努力義務となります。また、身近な子育て支援の場における相談機関の整備の推進や訪問による家事支援、児童の居場所づくりの支援などの事業が新設されることになります。 さらに、こどもまんなか社会の実現を目指して、少子化や虐待、子供の貧困など、子供関連施策を総合的に推進する新たな組織であるこども家庭庁が来年4月に創設されるなど、節目を迎えております。 そこで質問です。 私は、このような悲惨な虐待死が二度と起きてほしくないと心から願っております。 今後、県として、児童虐待についてどのように取り組んでいかれるのか、健康福祉部長にお尋ねいたします。  〔健康福祉部長沼川敦彦君登壇〕 ◎健康福祉部長(沼川敦彦君) 児童虐待の未然防止、早期対応は喫緊の課題であり、これまで、県では、児童相談所の体制強化や、子供とその家庭の実情把握や支援を行う市町村の子ども家庭総合支援拠点の設置を促進してまいりました。 さらに、市町村と児童相談所をつなぎ、心理等の専門性を生かした相談対応等を行う児童家庭支援センターは、熊本市を含め、県内8か所あり、県内全ての地域で、市町村、児童家庭支援センター、児童相談所の3層による相談支援体制を確立しています。 このような中、本年6月に児童福祉法が改正され、令和6年度から市町村に、子ども家庭総合支援拠点と母子保健の相談支援機関である子育て世代包括支援センターを一体化し、ワンストップで対応するこども家庭センターを設置することが努力義務とされました。また、市町村において、困難を抱える子育て家庭を訪問する事業や子供の居場所づくりを行う事業が新たに創設されるなど、市町村の役割がますます重要となっています。 このため、県では、今年度、国の交付金を活用して積み立てた安心こども基金により、こども家庭センターの設置や困難を抱える子育て家庭への支援強化などの取組を行う市町村を後押ししています。 また、今定例会には、当事者である子供が児童虐待等の相談がしやすいように、SNSを活用して相談を受け付け、速やかに市町村や関係機関と連携して対応するなど、相談支援体制の充実を図るための予算を提案しております。 今後も引き続き、県、市町村、関係機関が一体となって、児童虐待の未然防止、早期対応に全力で取り組んでまいります。  〔髙木健次君登壇〕 ◆(髙木健次君) 部長から答弁を頂きました。 県のほうでも、しっかりと県内全域で、市町村、児童家庭支援センター、児童相談所の3層による相談支援体制を確立している、また、こども家庭センターの設置、子育て家庭への支援強化などの取組を行う市町村を後押ししている、また、SNSを活用して相談を受け付け、関係機関と連携して対応すると大変力強い答弁を頂きました。 SNSの活用は、今定例会の補正予算で上がってきた新しい取組だというふうに思っておりまして、年間1,800万ぐらいですね。子供がSNSを通して連絡をして、いろいろ相談ができるという仕組みで、大変なかなか相談しにくい分野で、これは非常にいいことだろうというふうにも思っておりますので、どうぞしっかりとこの辺は対策をしていただければありがたいというふうにも思っております。 また、こういう質問をつくっておりましたら、今週ですかね、静岡県の保育園で、暴行容疑で保育士3人が逮捕されるというショッキングなニュースが飛び込んできました。保育士が、1歳児に対して、逆さづりにしたり、暗い部屋に閉じ込めたり、いろいろ暴言を吐いたりということで、何でこんな――親御さん、保護者が安心して預けて、親の代わりに保育をしていただくというような施設で、保育士さんがこういう虐待ということを聞くと、どうしても腑に落ちないようなところもありますけれども、いろいろこの裏には、いろんな背景もあるんじゃないのかなという感じもいたしております。 ただ、大人が、1歳児とか子供、乳幼児を虐待するというのは、本当に三つ子の魂百までというように、幾つになっても、その心から消えないんじゃないのかなという感じがします。そういうことも含めて、やっぱりこれからの虐待防止というものに力を入れていただきたいと。 先般、警察と児童相談所と連携をして、いろいろな問題のあるような家庭等を抜き打ちに入っていったというような新聞報道もされております。こういうのも、近所から子供の泣き声がするというような情報等があったら、やっぱり児相と警察官と行って、そういう状況を確かめてくるということも大事ではないのかなというふうにも思っております。 大変こういう問題は、私たちにとりましても、本当に何とかしてほしいという気持ちでいっぱいですので、健康福祉部長、しっかりこの辺は対策をお願いしておきたいというふうにも思っております。 健康福祉部長も、今ちょっと資料が出てきました。子供が3人、孫が2人ということで、本当かわいいですよね、部長。はい。しっかりかわいがってやってくださいよね。 子供は目に入れても痛くないと言いますけれども、私、入れてみましたけれども、痛くありませんでした。しっかりその辺も踏まえてお願いをしたいというふうに思っております。 そういうことをしっかりお願いして、時間の都合もありますので、次の質問に入りたいと思います。 国民保護事案等の有事を想定した県の体制についてお尋ねをいたします。 国民保護については、6月議会で同僚の髙島議員が、9月議会では松村議員が、それぞれ県国民保護計画に基づく避難先の確保や訓練について御質問をされておられます。 今回は、有事における県の体制やミサイル攻撃などに対する県民の取るべき行動に関する啓発について、熊本県防衛議員連盟の幹事長としての立場からも詳しくお尋ねしたいと思います。 今年2月のロシアのウクライナに対する侵攻開始から10か月が経過し、報道では、連日、爆撃による死傷者や破壊された学校や病院、インフラ施設などの被害の状況が報じられています。このロシアの軍事侵攻は、力による一方的な現状変更を図る動きであり、決して許されるものではありません。 また、中国は、台湾をめぐって軍事的な動きを活発化させています。2021年以降、中国軍機による台湾南西空域への侵入が増加しており、去る8月に台湾周辺で大規模な軍事演習を行った際は、発射した弾道ミサイルが日本の排他的経済水域、EEZ内に落下する事案も発生しています。 さらに、北朝鮮が繰り返し発射する弾道ミサイルは、10月4日には青森県上空を通過し、2017年9月以来5年ぶりとなる全国瞬時警報システム、Jアラートが発令されています。 このように、我が国を取り巻く安全保障環境は、急激に変化しています。 新聞やテレビでも、ミサイル攻撃に対する避難先の確保や、Jアラートが発令された場合に、住民がどのような行動を取るべきか等について報道されており、県民の間にもこのような有事への不安や関心が広がっていると感じています。 防衛や安全保障政策は、国の専管事項ではあります。しかし、万が一我が国に対する武力攻撃等があった場合、県として担うべき役割は大きいのではないでしょうか。 住民避難などにおける国や市町村、関係機関と連携した体制構築はもちろんですが、仮に、ミサイル攻撃などに関し、本県にJアラートが発令されたとき、実際に攻撃されたときなどの有事において、我々はどのような行動を取ればいいのか、日頃から県民の皆様に意識、理解していただくことは大変重要です。 来年春には、平成28年熊本地震や令和2年7月豪雨の教訓を踏まえた大規模災害時の防災拠点となる新防災センターが完成予定です。 本県では、自然災害に対する意識や備えは県民にも広がっていますが、自然災害以外のあらゆる有事における危機管理に対しても、県民の大切な命を守るために、しっかりと対応できる体制を整えておく必要があると考えます。 我が国は、戦後77年もの長きにわたり平和を維持しており、これからも、次の世代や子供たちのため、外交努力により平和的な解決が図られることを望んでいます。 しかし、県民の不安をあおるものではありませんが、あらゆる有事を想定外とせず、常に備えておくことの重要性は、本県がこれまでの災害経験などから得た教訓であり、学んできたものです。 そこで、2点質問です。 1点目は、ミサイル攻撃などの有事に備え、県ではどういう体制を取っているのか。そして2点目としては、県民にそういう、例えば避難をするというような啓発をどうやってやっていくのか。この2点について質問をしたいと思っております。知事公室長、よろしくお願いします。  〔知事公室長小牧裕明君登壇〕 ◎知事公室長(小牧裕明君) まず、1点目のミサイル攻撃などの有事に備えた県の体制や対応についてお答えします。 県では、自然災害はもとより、ミサイル発射情報など様々な危機事案に迅速に対応できるよう、連絡員として、24時間体制で職員を配置しています。 10月4日の北朝鮮のミサイル発射の際には、本県は、全国瞬時警報システム、いわゆるJアラートの発令地域ではありませんでしたが、国からのミサイル情報を受信後、直ちに危機管理部門の職員により情報収集に当たりました。 また、弾道ミサイルの県内上空通過などの事態が想定される場合は、本県にもJアラートが発令され、県は、知事を本部長とする緊急事態連絡本部を設置します。危機管理部門に加え、各部局の職員が参集し、落下物による被害がないかなど、市町村や警察、消防、海上保安庁等の関係機関と連携して情報の収集などを行うこととしています。 さらに、仮に本県が武力攻撃を受けた場合は、国からの指示により、県国民保護対策本部を設置し、全職員が参集します。 その際、国からは、県に対し、避難が必要な地域とその避難先となる地域などを示した上で、避難措置の指示が出されます。県は、この指示に基づき、市町村や関係機関と連携して、住民の避難誘導と食料や生活必需品、医療の提供などの救援措置を実施することとなります。 このため、県では、市町村を対象に、住民の避難誘導を迅速に行うための対処方法に関する研修を、国と共催で、今月7日に実施したところです。 加えて、今月末には、自衛隊幹部や有識者を招いて、市町村の危機管理監等と、我が国の安全保障環境に関する現状や自治体の役割などについて、意見交換会を実施することとしています。 さらに、来年度は、ミサイル攻撃を想定した国や市町村と共同で行う住民避難訓練や他国からの武力攻撃を想定した国、隣県、警察等と連携して行う図上訓練の実施を予定しています。 次に、2点目のミサイル攻撃などに対し、県民の取るべき行動の啓発についてお答えします。 議員御指摘のとおり、有事の際に取るべき行動について、県民の皆様に意識、理解していただくことは大変重要と考えています。 このため、全国知事会を通じ、国に対して、国民へ適切な情報発信や具体的な避難方法などについての普及啓発の強化を求めています。 また、県としても、これまで、県や市町村のホームページ、住民、地区防災組織への防災講話などを通した啓発に取り組んできました。 さらに、来年度は、県民の意識、理解を深めるため、有事の際に取るべき行動や来年度実施する住民避難訓練の様子を取り入れた啓発動画を制作することを検討しています。より広く県民の皆様に届くよう、この動画は、SNS等による情報発信や新防災センターでの展示などに活用したいと考えています。 引き続き、国に対して国民保護の充実に向けた働きかけを行うとともに、関係機関と連携し、避難施設の確保や訓練、県民への啓発など、県民の安全確保に向けた取組を進めてまいります。 ○議長(溝口幸治君) 髙木健次君。──残り時間が少なくなりましたので、発言を簡潔に願います。  〔髙木健次君登壇〕 ◆(髙木健次君) 知事公室長から答弁を頂きました。 県でも、防災センター開設と、その以前から、しっかりとこの辺に対しては防災体制を取っているということで、知事をトップにして、国に対して、国民への適切な情報発信や具体的な避難方法についても啓発強化を求めていると。また、住民避難訓練の様子も取り入れた啓発動画等も作成するということであります。大変力強い言葉を頂きました。 今本当に、ここにおられる皆さんも、北朝鮮が、1日20発も30発も日本列島を飛び越えるようなミサイルを撃ち込んでおりますけれども、何か間違って事故等も含めてあったときにはやっぱり大変だということで、災害については、非常に熊本県も経験があって、その辺に対する備えはちゃんとある程度はできていると思うんですけども、今のこの瞬間に、もしもそういうミサイルがどっかに落ちたということになったら、これはあたふたして何もできないと思うんですね。そういうことはしっかりと備えを持ってやっておいていただきたいというふうに思っております。 知事が、トップ、最高指揮者ということでありますけれども、知事もいろいろと忙しいでしょうから、私は、知事が、その下の方に、もう1つ知事の下の方に最高権限を与えてやって、知事はいろんなほかのあれもあるでしょうから、そういう体制も必要でないのかなというふうにも思っております。 ミサイルといいますと、ミサイル1発が何億円するのかなという、ちょっと調べてみたら、30発ぐらい打った後、北朝鮮ですけれども、500億とか1,000億かかるそうですね。自国の食料、安全に大きく寄与する金額だと思いますけれども、これからの、本当、安全社会というのは、いっときの何といいますか、安心もできないというふうに思っております。そのことを我々もしっかりと肝に銘じて、特に防災センターの役割というものをしっかりと充実させて、頑張っていただければありがたいというふうに思っております。 以上で今回私が用意しました5本の一般質問、全て終了いたしました。 長い間御清聴ありがとうございました。(拍手) ○議長(溝口幸治君) この際、5分間休憩いたします。  午後2時9分休憩    ――――――○――――――  午後2時19分開議 ○議長(溝口幸治君) 休憩前に引き続き会議を開きます。 鎌田聡君。  〔鎌田聡君登壇〕(拍手) ◆(鎌田聡君) 立憲民主連合・熊本市第二選挙区選出の鎌田聡でございます。午後の2人目ということで、大変皆さんお疲れでしょうから、できるだけ早く切り上げようという思いは持っておりましたが、たくさん通告をしてしまいまして、大変御迷惑をかけるといけませんので、早速質問に入りたいと思います。 まずは、空港アクセス鉄道についてです。 知事は、今議会開会日に、空港アクセス鉄道については、豊肥本線の肥後大津駅からの延伸で進めるという方針を示して、一日も早い実現に向けて、具体的取組を加速すると表明されました。 これまでの議会での議論の中で、知事は、令和2年6月議会で、空港アクセス鉄道の事業化の判断については、一旦立ち止まり、検討委員会を設置して、他交通モードとの比較についても、幅広く意見を伺いながら検討を進め、議会をはじめ、県民の皆様から理解を得られるよう努めていくと答弁をされています。 その後、確かに検討委員会を設置して議論は進めてこられていますが、答弁で述べられていたほかの交通モードとの比較について、十分になされたのかについては疑問です。いつの間にか、TSMC進出を踏まえたルート見直しの議論になってしまい、一旦立ち止まっての検討から、とんとん拍子に、一気に事業化前提のルート変更になった感があります。 空港アクセス鉄道は、400億円を超える巨額の事業費を要します。その事業費を負担する県民が、その必要性を痛感して、納得性が得られるような事業でなければなりません。 これまでも再三申し上げてきましたが、空港アクセス鉄道は、需要予測の基になっている数字が過大過ぎて、需要予測に信憑性がありません。基になっているこれまでの熊本空港の航空旅客者数最高値の334万人の約2倍の622万人という航空旅客者数は、あくまでも空港運営会社の熊本国際空港株式会社が掲げる30年後の目標値です。 その希望的な目標値の航空旅客者数を基に、延伸ルートとなる肥後大津駅からのアクセス鉄道の利用者を1日4,900人と予測されています。しかも、それは30年後ではなくて、アクセス鉄道開業後すぐの利用者数です。 私は、とてもその人数が利用するとは思えないのです。それを裏づける数字として申し上げますが、現在、肥後大津駅から空港を結ぶ無料のタクシーを利用した空港ライナーが運行されていますが、利用者は1日200人程度です。無料のタクシーでそのくらいの利用者数です。アクセス鉄道の運賃は、肥後大津駅から空港まで320円とされています。これまで無料だったのに新たに320円を負担して、鉄道ができたからということで、現在の20倍を超える人数の方々が利用するとはとても考えづらいのです。 そして、鉄道ができて、どれだけの県民がこの鉄道を利用するのかということも冷静に考えるべきです。私の周りには、三里木駅からのルートを検討していたときは、県民総合運動公園でロアッソの試合があるときには、中間駅までは利用したいというような声は聞いていましたが、そのルートがなくなった状況で、この鉄道を空港までの移動に利用しようという声は一切聞きません。そして、そもそも多くの県民が、そんなに度々飛行機を利用していないので、この鉄道を利用して空港に行く機会はほとんどないと思います。 このように、アクセス鉄道ができたからといって、何年も空港に行っていない県民が鉄道に乗ることや、現在、自動車やバス、タクシーを利用している人の多くが鉄道利用にシフトすることはとても考えられません。 ですから、1日4,900人がアクセス鉄道を利用するという見通しはあまりにも過大で、見通しが甘過ぎです。1日4,900人の利用が見込めなければ、肥後大津ルートで36年経過したら黒字転換するという採算見通しも無理筋であり、40年以内の黒字転換が条件となっている鉄道事業認可の採択基準を満たしません。 そこで質問ですが、空港アクセス鉄道は、多額の県民の税金を投じて進められる事業です。そして、赤字が長引けば、その負担は県民が負い続けることが考えられます。事業を進める以上は、県民に対して、より正確な将来見通しを明らかにして、ほかの交通手段と比較してもアクセス鉄道が有益であるということを示した上で鉄道建設の必要性を説明すべきですが、その説明責任をどのように果たされるのでしょうか。 そして、実際、肥後大津ルートに見直してからのほかの交通手段との比較検討は十分に行ってこられたのでしょうか。既存の無料タクシーの空港ライナーや豊肥本線からバスを走らせた場合と比較してのアクセス鉄道の有益性についてどのようにお考えか、知事にお尋ねをいたします。  〔知事蒲島郁夫君登壇〕 ◎知事(蒲島郁夫君) 空港アクセス鉄道については、有識者や交通事業者、経済界など幅広い分野の専門家から成る空港アクセス検討委員会を設置し、鉄道延伸、モノレールの新設、市電延伸にBRT、いわゆるバス高速輸送システムを加えた4つの交通システムについて、定時性、速達性、大量輸送性及び事業の早期実現性の観点から総合的に検証しました。 その結果、鉄道延伸が最も効果的かつ、より早期に実現できる可能性が高いとの結論に至りました。 この結論は、それぞれの交通システムの特性とメリット、デメリットを総合的に比較した結果であり、3ルートのいずれであっても、鉄道の優位性は変わらないものと考えています。 また、先月開催した空港アクセス検討委員会においては、肥後大津ルートが妥当という結論を頂きました。それは、道路と鉄道の関係性も議論した上で、空港アクセス鉄道は必要であるとの御意見を頂いたものです。 ほかにも、空港と主要駅を直結する鉄道があることは都市の格を高める、直通運行は来訪者にとって乗換えのストレスが少なく、行き先表示などが分かりやすい、直通運行による鉄道延伸は、県民の利便性向上はもちろん、外国人を含む県外の方に熊本を選んでもらえるための大きなインセンティブになるといった御意見も頂いており、空港と肥後大津駅を結ぶ空港ライナーやバスにはない大きなメリットです。 空港アクセス鉄道を将来にわたり持続可能な鉄道路線とするため、私自身が先頭に立って、JR九州との協議を進めるとともに、国に対して財政支援などの特別な配慮を要望してまいります。  〔鎌田聡君登壇〕 ◆(鎌田聡君) 今お答えを頂きましたが、全てアクセス検討委員会での議論の経過というか、意見、それが全て述べられたというふうに思っております。知事としてどうお考えなのか、それをもう全部追認されるということだろうとは思いますが、全て主語がアクセス検討委員会での比較ということでございました。 いずれにしましても、その検討委員会も、その前提となっているのは、先ほど申し上げました1日4,900人という需要予測に基づいているわけでございます。開業後すぐに1日4,900人の利用者がなぜ見込めるのか。 肥後大津駅から空港駅までは、今回そのルートになったら中間駅がございませんので、空港やその周辺に出かける人だけの利用になるわけであって、とてもその人数は見込めないと思いますが、その説明が全く不十分だと思っております。 仮に、見込みどおり4,900人の利用があっても36年間は赤字であり、それが見込めなかったら、さらに赤字は続くことになります。 そしてまた、定時性や速達性の観点からも鉄道が優位と言われましたが、鉄道では、事故や災害による急な運休や遅延というのもあります。豊肥本線は高架化されておりませんので、比較的に事故や災害での運休が多いと言えます。 今年の1月から今日までの豊肥本線の運休した日を私は数えてみましたら、熊本県内区間で33日ありました。原因は、人身事故、大雨、台風、落石、動物支障、停電、車両トラブルなどです。あらかじめ分かっているトラブルならばよいのですが、突然の事故などで、その場で電車を止められたら、空港まで行くときは、その後どのように移動するのか、そういったその辺りのリスクもやっぱり考えておく必要があると思います。 また、事業費が今概算で410億円とされていますが、本当にその額で済むのでしょうか。鉄道が延びることによって、やっぱり変電設備、この改良なども必要になってくると想定されますし、橋梁やトンネル工事なども伴いますので、増額もあり得ると思いますし、そのほかにも、開発による地下水など環境への影響もあります。 そしてまた、空港まで熊本市中心部から20分でつなぐ高規格道路建設の話も具体化をしている中で、それでも鉄道が必要なのでしょうか。 アクセス鉄道事業を進めていくには、多くの県民の理解を得るための説明がまだまだ不足をしていると思います。これから詳細な調査を進めていかれるというふうに思いますが、今後、県民の疑問、異論、これにもしっかりと耳を傾け、さらなる説明を尽くされることを強く求めまして、次の質問に移ります。 流水型ダム環境アセスメントの進め方についてです。 知事は、川辺川の流水型ダム建設を進めていくに当たっては、命と環境の両立を求めて、環境影響評価、アセスについても、法に基づくアセスかそれと同等のアセスの実施を国に求め、これに従って、現在、法と同等の手続が進められてきています。 アセスは、事業の環境への影響を予測して十分な環境保全対策を実施するために、配慮書、方法書、準備書、評価書の4段階の手続を行います。 今回の流水型ダムでは、最初の手続である配慮書に相当する環境配慮レポートを本年3月25日に公表して、住民の意見を求めました。アセス法において、配慮書は、複数案や代替案も求められるものでしたが、今回の流水型ダムの配慮レポートは、そういう案の提示どころか、ダムの規模や構造が分かる図の記載がなく、住民からは、配慮書の趣旨に合うものではないという不満が多く聞かれました。 知事も、この点を問題視して、6月22日に、知事意見として「本配慮レポートにおいては、放流設備等の構造や完成イメージ図、試験湛水に係る湛水期間及び維持流量の検討の状況等が記載されていないため、方法レポート以降においては、ダムの実施設計の進捗に応じ、検討状況や結果等を可能な限り詳細に示すこと。」と、放流設備等の構造や完成イメージ図、試験湛水に係る湛水期間及び維持流量の検討の状況等を明確に求められています。 しかし、今回公表された方法レポートには、そういう情報が一切ありません。 スライドを御覧ください。(資料を示す) これが、今回の説明会で示されたダムの概要図です。 左側は、旧の川辺川ダムで、右側が新しい流水型ダムですが、このように、ダムの概要イメージとして、電信柱のようなものが記載してあるだけです。流水型ダムのトンネルの長さや構造、附属設備の概要、副ダムの構造や段差の高さなど、分からないことだらけです。 そして、次のスライドですが、これは、福井県に建設されている流水型ダムの足羽川ダムの方法書に記載されていたダムの完成予想図です。ダムの構造が詳細に示してあります。このほかにも、穴の詳細な説明図などいろいろな図面が記載されてありました。 同じ方法書段階で、この違いは何でしょうか。完成予想図で設備等の構造図等が示されなくては、環境や生物に与える影響について、どんな調査がどのくらいの期間必要なのか、調査項目や方法を検討することはできません。 また、この方法レポートに関して、流域内での説明会が主な自治体7か所で開催されましたが、八代市の説明会会場は、旧の泉村であり、旧八代市市街地からは車で2時間以上かかる町です。八代市は、流域の資産、人口の7割を占め、川辺川ダムの費用対効果の大きな割合を占めていますが、その旧八代市内では開催されていません。また、流域の芦北町でも開催されていません。このような説明会の開催では、説明会をやったという既成事実をつくっただけで、住民への説明責任を果たそうとしていたとは到底思えません。 そのような意見が説明会でも出ていましたが、国交省の見解は、ほかのダムの事例も踏まえて、ダム建設によって球磨川流域で影響が出るのは球磨村渡地区までなので、説明会は、渡地区から下流では開催の必要はないとの考えのようです。でも、川はつながって流れているのです。ダムの影響は、渡地区にとどまらず、その下流の芦北町や八代市街地や海まで及ぶはずです。環境に極限まで配慮し清流を守るという知事の強い思いは、国交省には全く届いてないのではないでしょうか。 そこで質問ですが、知事は、ダムの完成予想図や構造図がない方法レポートで、環境や生き物に対する調査の対象や調査の手法を検討することができるとお考えでしょうか。その問題点を指摘した知事の意見は全く無視されたものになっていますので、知事は、方法レポートのやり直しを国交省に求めるべきです。 そして、説明会についてですが、今回の会場選定で住民への説明責任を果たしたとは言えません。方法レポートのやり直しを国交省に求めて、その上で県民に対して十分な説明と意見募集を行っていただきたいと思いますが、知事の見解を求めます。  〔知事蒲島郁夫君登壇〕 ◎知事(蒲島郁夫君) 私は、令和2年11月に、この議場で、球磨川流域の治水の方向性として、緑の流域治水に取り組むことを表明し、その一つとして、新たな流水型のダムを国に求めました。 あわせて、客観的かつ科学的な法または法と同等の環境アセスメントの実施も国に要望し、現在、法に準じて手続が進められています。 議員御指摘の配慮レポートに対する知事意見については、国にもしっかり受け止めていただき、方法レポートの作成に当たって開催された第4回検討委員会において、放流設備の配置などの検討例が示された上で、議論が行われました。 また、この検討委員会、そして方法レポートにおいて、国は、ダムの設計や運用等の検討に当たっては、検討の進捗に応じ、改善を試みながら進化させていく旨表明されました。 このように、環境アセスメントの手続と並行して、具体的な構造や環境への配慮内容等が明らかになり、説明されていくものと認識しています。 次に、方法レポートの説明会についてお答えします。 法では、説明会について、縦覧期間中に、対象事業に係る環境影響を受ける範囲であると認められる地域において開催しなければならないことが規定されています。 この地域に関する国の見解は、方法レポート段階では、法に基づくアセスメントを行ったほかのダムも参考にして、支川からの流入水による希釈や河川の自浄作用等により、ダム下流域では、おおむねダムの集水域の3倍程度の流域面積に相当する地域までとされています。今回は、その範囲を、ダムの集水域を含む川辺川流域及び川辺川合流点から球磨村渡地点までの球磨川の自治体としていると伺っています。 なお、今後、環境影響予測・評価を行う中で、検討の結果、環境影響が生ずるおそれがある場合には、調査予想範囲についても必要な検討を行うとされています。 県としても、年内にスタートする方向で準備を進めている事業の方向性や進捗を確認する仕組みの中で、流水型ダムについて、流域市町村や流域住民の皆様と一体となって、しっかりと確認してまいります。  〔鎌田聡君登壇〕 ◆(鎌田聡君) 国交省のやり方に知事は怒りを示されるのかなと思っておりましたが、お人柄でしょうか、国のやり方を是認するというお答えのように聞こえました。 今回示されましたダムの概要イメージは、知事が求めたものとは程遠いものではなかったのでしょうか。先ほど映しましたが、先ほどの図面のように、ダムか電柱なのか分からない図面で、穴空きダムの穴の場所や大きさや長さ、それも記してないわけです。 最近では、コンピューターグラフィックで、橋や建物や道路など、もう本当に本物のようなイメージが出るわけですけれども、先ほどの図面では、これは、コンピューターどころか、定規とペンで書いたような図面で、こういうものを記されても、環境への影響をしっかりと検討できないというふうに考えます。 知事が環境に極限まで配慮するために穴空きダムと言っているのに、その肝腎な穴について、何も記載していないというのは非常に問題だと思いますから、そこは、知事は強くやっぱり物を言うべきだろうと思っております。 また、ダムによる環境の影響を受ける範囲についても、球磨村渡までと国交省が言っていることに理解を示されていますが、違和感は感じておられないのでしょうか。知事は、環境に極限まで配慮すると強く言われていますが、配慮するのは、極限まででなくて、球磨村渡までということになっているのではないでしょうか。 旧川辺川ダムの事業の際には、球磨川全体へのアユへの影響を懸念して、球磨川漁協が漁業補償締結を拒否しましたし、八代海沿岸の漁協にも不安が広がり、国は、海への影響を調べる委員会も設置をしています。 今回の流水型のダムの費用対効果は、八代市街地までも含んで1.9倍とされていますが、こういった費用対効果の数値を出すときはそこまでを含みますけれども、環境影響評価については球磨村渡までということで、国交省が都合のいいように範囲を決めていると言わざるを得ません。 私が変わったことを言っているように捉えられているかもしれませんけれども、一般常識に照らして、私は、変わっているのは国交省だろうと思っております。環境影響評価の説明会を、あと数か所増やして、流域市町村全部で実施をすればいいではありませんか。 今後、県で流水型ダムの事業の方向性や進捗を確認する仕組みをつくるとのことですので、その仕組みの中で、知事は、国交省の進め方を追認するのではなくて、球磨川の環境に極限まで配慮するとの御自身の決意どおりに、流域住民の声にしっかりと耳を傾けていただけるように国に求めていただきたいと思います。 1点目のアクセス鉄道も流水型ダムも、完成予定は12年から13年後ということになっております。そのとき、知事は、知事でいらっしゃるかも分かりませんけれども、そのときの知事や県民にとって、この2つの事業が負の遺産にならないように、この2つの事業を進めるこのボタンを押した責任者として、県民の理解を得るための対応、これは最低限ではなくて最大限やっていただきますよう強く要望いたしまして、次の質問に移ります。 こども家庭庁設置に伴う県の対応についてです。 本年6月、こども家庭庁設置法とこども基本法が国会で成立して、それぞれ来年4月1日に施行されます。 こども家庭庁は、こども基本法の基本理念に基づいて、子供施策を推進していくための司令塔の役割を担うとされています。これまで府省庁ごとに行われてきた子供施策に対して、首相直属の内閣府の外局として創設し、他省庁などの施策の改善を求める勧告権を持たせることで、縦割りによる弊害を解消、是正して、子供と家庭の福祉、保健その他の支援、子供の権利擁護を一元化いたします。また、年齢や制度の壁を克服した切れ目ない包括的支援の実現が目指されます。 ただ、この新組織の名称については疑問が残ります。検討当初はこども庁という名称とされていたにもかかわらず、どこからどのような要請があったのか、今となったらよく理解できますが、最終的にはこども家庭庁となりました。 子育てにおいて家庭が大切であることに異論はありませんが、貧困、虐待等に苦しむ子供たちにとって、必ずしも家庭が安心できる場にならず、家庭という言葉に否定的な感情を持つ方々も存在をしています。社会全体で子供を支援すべきと考えますので、こども家庭庁という名称には違和感を覚えます。 このこども家庭庁の組織ですが、構成する部門は3部門に分かれていて、大綱を作成するなど、子供の声を反映させた政策の策定や全体を取りまとめる企画立案・総合調整部門、母子保健、就学前の子供の育ちの保障などの成育部門、そして、虐待や独り親家庭に対する支援部門。現在厚生労働省の管轄となっている障害児支援は、支援部門に移管されます。 このように、厚生労働省、内閣府の管轄であったものはこども家庭庁に移管されますが、文部科学省の管轄である幼稚園や小中学校での教育、いじめなどの問題は移管されていません。縦割り行政を克服することを目的としたこども家庭庁ですが、結局3つの部門の縦割りとなっていて、必要なところに必要な支援が届くのかも心配をいたします。 このように完全形ではありませんが、子供政策を進めていく国の司令塔ができるわけですので、県としても、このこども家庭庁に対応する組織をつくる必要があるのではないでしょうか。 そこでお尋ねですが、県として、子供政策を進める一元化した組織を設置する考えはないのか、また、こども基本法で、都道府県ではこども計画を策定するように努めることとされていますが、県として、こども計画の策定は行わないのか、以上の2点について、知事にお尋ねをいたします。  〔知事蒲島郁夫君登壇〕 ◎知事(蒲島郁夫君) 社会の希望であり、未来をつくる宝である子供たちが健やかに育っていける環境をつくることが、今を生きる私たちの使命であると考えています。 それでは、まず、1点目のこども家庭庁に対応する組織についてお答えいたします。 本県では、平成23年度から、健康福祉部内に子ども・障がい福祉局を設置し、教育委員会等と連携を図りながら、子供・子育て支援に取り組んできました。 具体的には、教育、保育等の推進をはじめ、虐待を受けた子供やヤングケアラーなど、援助を必要とする子供への支援や、発達障害児、また、医療的ケア児等の障害児施策の充実、子供貧困の対策など、子供を取り巻く様々な課題に的確に対応しています。 あわせて、少子化の進行による人口減少は、地域産業の担い手の減少、地域コミュニティーの衰退など、本県の将来に大きな影響を与えることから、出生数が増える環境をつくることも喫緊の課題であります。 そこで、あらゆる分野に子供、子育ての視点を加えるとともに、官民挙げて少子化対策等に一体的に取り組むことで、いわゆるこどもまんなか社会の実現を目指してまいります。 そのために、来年度から創設されるこども家庭庁の動向も見据えつつ、まずは、子ども・障がい福祉局を中心に、県庁一丸となって、こどもまんなかの施策に取り組んでまいります。 次に、2点目のこども計画の策定についてお答えします。 都道府県のこども計画は、令和5年4月1日に施行されるこども基本法により、来年秋をめどに国が策定するこども大綱を勘案して定めることとされています。 このこども計画は、子供や子育て当事者等の意見を反映させることが大きな特徴であり、既存の子ども・子育てプラン等と一体のものとして策定することが可能です。 このため、新たな県のこども計画の策定については、熊本の未来を託す子供たちの視点を尊重し、こども大綱や現プラン等を踏まえながら検討してまいります。  〔鎌田聡君登壇〕 ◆(鎌田聡君) 県の組織体制については、当面は、現行の子ども・障がい福祉局を中心に、県庁一丸となってこどもまんなか施策に取り組むということでございました。現行の組織としながらも、やはり、それはもうこれから健康福祉部だけではなくて、知事のやっぱり強いリーダーシップで、こどもまんなか施策を進めていただくということが重要になると思います。 あと、こども計画につきましては、やっぱり子供たちの視点というのをしっかり尊重して、来年度策定されるこども大綱を踏まえながら検討されるということでございましたので、これまでのやっぱりプランの焼き直しではなくて、そのように、子供の意見、そして子供、子育て当事者の声、そういったものをしっかりと盛り込んだこども計画を策定されることを切に願いまして、引き続き、子供に関わる質問を2点いたします。 まずは、里親やファミリーホームへの支援についてです。 里親制度は、何らかの事情によって家庭での養育が困難または受けられなくなった子供たちに、温かい愛情と正しい理解を持った家庭環境の下での養育を提供する制度です。家庭での生活を通じて、子供が成長する上で極めて重要な特定の大人との愛着関係の中で養育を行うことにより、子供の健全な育成を図る有意義な制度と言えます。 現在全国で家族と暮らせない子供は、約4万5,000人で、そのうち熊本県は、約640人、そのほとんどが乳児院や児童養護施設で暮らしていますが、15.6%の100人が里親家庭やファミリーホームで暮らしています。 ファミリーホームとは、家庭で暮らせない子供たち5~6名を養育者の家庭に迎え入れて養育する家庭養育として設置されているもので、熊本県では平成23年から開設されていて、現在、県内に9ホームあります。 そのファミリーホームは、支援が難しい児童を養育していることが調査結果として明らかになっています。 令和2年1月の厚生労働省の児童養護施設入所児童等調査の概要によりますと、何らかの障害等のある児童、罹患傾向がある児童、虐待を受けたことがある児童、学業の遅れがある児童などの割合が、ファミリーホームが比較的高い割合となっています。また、重度心身障害の児童も一定数いることが明らかにされています。 これらのデータは全国の状況ですが、本県においても、里親やファミリーホームの場合、支援が難しい児童を24時間365日休みなく支援をしており、大変厳しい状況にあると言えます。 県では、令和2年3月に熊本県社会的養育推進計画を策定し、里親委託率の向上を掲げていますが、里親やファミリーホームに対する支援は十分なのでしょうか。 例えば、里親の場合は、児童の養育を行う際に、様々な機会において、里親とその委託児童の関係性を明らかにしなければならない場面があり、自治体によっては、独自に作成した携帯用の証明書の発行を行っている自治体がありますが、熊本県では、まだ導入されていません。 また、国は、令和3年度より、児童養護施設等体制強化事業の中に、ファミリーホームの業務負担軽減策として、補助者等の雇い上げのための費用を計上しています。通常、措置の対象は、養育者2人と補助者1人の経費が想定されていますが、この事業では、さらに追加の補助者が配置できるようになっています。 佐賀県では、既にこの国の体制強化事業を活用して、追加の補助者を配置するための予算を確保し、事業を実施していますが、熊本県では、まだ実施されておりません。 そこで質問ですが、里親委託率の向上を図るためには、里親やファミリーホームへの支援の充実が不可欠だと考えますが、熊本県において、今後、里親やファミリーホームに対してどのような支援を行っていくのか、健康福祉部長にお尋ねをいたします。  〔健康福祉部長沼川敦彦君登壇〕 ◎健康福祉部長(沼川敦彦君) 虐待などにより社会的養護を必要とする子供たちは、心身に様々な影響を受けている場合が多く、信頼できる特定の大人と愛着関係を形成し、継続的に安心して暮らせる家庭的な養育環境が必要であると考えております。 このため、県では、令和2年3月に策定した社会的養育推進計画において、令和11年度の里親委託率の目標を計画策定時点の3倍以上となる38%に設定し、様々な取組を進めています。 具体的には、まず、受皿となる里親登録数の増加や里親、ファミリーホームへの支援の充実を図るため、里親の新規開拓やマッチング、養育支援といった業務を包括的に担うフォスタリング機関を令和2年度に2か所開設しました。 また、フォスタリング機関や児童養護施設等に配置されている里親支援専門相談員等と児童相談所との連携を強化し、里親やファミリーホームへの支援を継続的に行っております。 これらの取組により、計画策定時に比べて、里親登録者は86人増加し278人に、里親委託率は2.2ポイント上昇し15.6%となるなど、着実に成果が現れています。 一方、社会的養護を必要とする児童が何らかの障害を抱えているケースは、増加傾向にあり、子供の生活全般の支援を行う里親やファミリーホームの負担が大きくなっているのも事実です。 県では、このような里親等の負担を軽減するため、児童を一時的に預かるショートステイやレスパイトケアの利用を促進するとともに、里親やファミリーホームの交流や相談支援などに取り組んでいるところです。 議員御指摘の里親の携帯用証明書については、様式や規程の整備、関係機関との協議など、証明書発行に向けた具体的な準備を進めております。 また、ファミリーホームの補助者の雇い上げの支援については、県ファミリーホーム協議会等からお話をお伺いし、検討に着手したところです。 今後も、関係機関等としっかり連携を図りながら、里親やファミリーホームへの支援を充実させ、社会的養護を必要とする子供たちが家庭と同じような生活ができる環境づくりに努めてまいります。  〔鎌田聡君登壇〕 ◆(鎌田聡君) 今御答弁を頂きました里親の携帯用証明書の発行やファミリーホームの補助者の雇い上げの支援について、具体的検討に着手していると、前向きな方向性をお答えいただきましたので、ぜひしっかりと里親制度、そしていわゆるフォスタリング機関のさらなる強化も含めて取り組んでいただきますようにお願いをいたしまして、次の児童相談所についての質問をさせていただきたいと思います。 昨年度県内の児童相談所に寄せられた児童虐待に関する相談は、2,300件余りで、過去最多だった前の年度よりやや減ったものの、依然多い状況が続いています。この依然として多い相談に対応するために、各児童相談所では、限られた職員で、子供を虐待から守るために、日夜大変な業務を遂行していただいております。その取組に対して、改めて敬意を表したいと思います。その上で、3点児童相談所に関しまして質問をいたします。 まずは、児童相談所の業務の進め方に対する第三者評価についてです。 令和元年に改正された児童福祉法第12条の規定により、都道府県知事は、児童相談所が行う業務の質の評価を行う等により、当該業務の質の向上に努めなければならないとされています。つまり、第三者評価を行うプロセス並びに評価結果を踏まえて、児童相談所の機能しているところや改善すべきところを確認し、児童相談所の質の確保、向上を図ることが必要だと考えますが、本県では第三者評価を受けているのでしょうか。 といいますのも、本年6月の出来事ですが、県の中央児童相談所において、虐待を疑われる兄弟が一時保護された後、1人がコロナに感染したことが判明して、翌日には虐待があったとされる親の元に返していたことが明らかになりました。 私は、この対応は非常に問題であると考えますが、虐待から子供を守る立場の児童相談所として、この対応は適正だったのでしょうか。この対応についての評価をはじめとして、第三者評価を実施することによって、児童相談所は大変忙しい環境で業務に取り組まれていますが、そんな御苦労をされているからこそ、この業務の質の確保、向上に努めなければならないと考えます。 そこで、1点目の質問として、児童相談所の第三者評価の実施についてお尋ねをいたします。 次に、そのことにも関連しますが、子供の意見表明を支援する取組、いわゆるアドボカシーについてお尋ねします。 虐待を受けているとして一時保護した子供本人から意見を聴いて処遇に反映することが重要ですが、なかなか子供の本心は聞き取ることが容易ではありません。 そこで、意見表明支援員、子供アドボケイトとも言いますが、子供の意見を聴いて、児童相談所等にその意見を代弁する支援員が必要です。 国は、2019年度に、意見表明支援員を配置し、子供の意見を聴く仕組みなどを導入した自治体に補助金を出すモデル事業を始めています。 厚労省によりますと、意見表明支援員は、児童カウンセリングに取り組む団体など、児童福祉に関し、知識または経験のある者としています。一時保護した子供の中には、人見知りや心理ショック、低年齢など様々な要因から、意見をどう言ったらいいのか分からなかったり、うまく話ができない子もいると思います。そのような子供の意見を酌み取る仕組みづくりは、子供の権利擁護のためにも必要な取組であると考えます。 そこで質問ですが、県として、子供の意見に耳を傾け、その権利を守る子供アドボカシーについてどのように取り組んでいかれるのか、お尋ねをいたします。 3点目に、八代児童相談所管内への一時保護所の設置についてお尋ねします。 県内の一時保護施設は、県が設置している中央児童相談所管内の閉鎖型の一時保護所に加え、児童養護施設内に設置している開放型の一時保護専用施設が、中央児童相談所管内と八代児童相談所管内にそれぞれ1か所設置され、合わせて3か所になりました。それでも、一時保護児童が増え、一時保護専用施設を持たない児童養護施設や里親、ファミリーホームなどに頻繁に保護されている現状があり、緊急的な対応を行うこともあることから、受ける側の負担感や問題点も出ています。 中央児童相談所管内には、県の一時保護所と児童養護施設の一時保護専用施設の2か所がありますが、八代児童相談所管内には、児童養護施設の一時保護専用施設しかなく、県の閉鎖型の一時保護所がありません。現在の一時保護児童の増加を考えますと、八代児童相談所管内にも、県の一時保護所を設置することが必要だと考えます。 ただ、八代児童相談所は、県南広域本部の建物の中にあるために手狭となっています。そこで、県南広域本部の建物から八代児童相談所を別の場所に変えて、一時保護所を併設して児童相談所を構えていただくことも考えていただきたいと思います。 そこで、3点目の質問ですが、八代児童相談所管内への一時保護所の設置についてどのようにお考えか、1点目、2点目の質問と併せて、健康福祉部長にお尋ねをいたします。  〔健康福祉部長沼川敦彦君登壇〕 ◎健康福祉部長(沼川敦彦君) まず、1点目の第三者評価についてお答えします。 子供を取り巻く環境や子供の家庭に対する必要な支援が刻々と変化する中で、児童相談所がその役割を果たせているか、課題に対し、どのような取組が必要かを客観的に確認することは、子供の最善の利益の確保という観点から、とても重要です。 そのため、児童相談所の第三者評価は、子供の権利擁護機関として機能しているかを確認するためにも有効な手段と考えております。 そこで、今年度は、当初予算に第三者評価に必要な経費を計上し、まずは中央児童相談所の第三者評価を実施することとしています。 このような第三者評価を通して、課題の把握や改善に努めるとともに、児童相談所自らが専門性の向上を図るための研修等を実施することにより、しっかりと機能するよう質の向上を図ってまいります。 次に、2点目の子供アドボカシーについてお答えします。 本年6月に児童福祉法が改正され、令和6年度から、都道府県等において、子供の意見の尊重など、子供の権利擁護に向けた環境整備等を行うこととされました。 そこで、本県では、改正児童福祉法の施行に先立ち、今年度から意見表明支援員を配置しているNPO法人に委託し、子供の意見表明に関するモデル事業に取り組んでおります。 具体的には、意見表明支援員の確保、育成を行うため、9月から10月にかけて、子どもアドボカシー養成講座を実施し、弁護士や社会福祉士、保育士など約80人が受講されました。さらに、11月から児童養護施設や一時保護所の子供への説明を行い、意見表明支援員による子供への意見聴取の取組を開始したところです。 今後は、このモデル事業の検証を行いながら、令和6年度の本格的な実施を見据え、子供の最善の利益を目指した仕組みづくりを進めてまいります。 最後に、3点目の八代児童相談所管内への一時保護所の設置についてお答えします。 県では、これまで、子供の安全確保という観点から、自由な外出を制限する閉鎖型の施設を県内に1か所設置し、一時保護を行ってきました。その後、平成30年度になって、国が、子供の権利擁護や学習権保障の観点から、速やかに開放的環境に子供を移し、学校へ通学ができる環境を整えるよう、新たなガイドラインを示しました。 そこで、本県では、開放型の一時保護専用施設を、令和2年度に八代児童相談所管内に1か所、令和3年度に中央児童相談所管内に1か所設置し、一時保護機能の充実強化を図ったところです。 さらに、子供の権利擁護を推進し、できるだけ家庭的な環境で支援するため、里親やファミリーホーム等への一時保護委託も積極的に実施しております。 県としては、子供の権利擁護の観点から、引き続き、開放型の一時保護専用施設の充実を進めてまいります。 また、議員御提案の閉鎖型の一時保護所の八代児童相談所管内の設置については、今後の一時保護児童の推移やそのニーズ、国の動きなどを注視してまいります。 今後も引き続き、子供の権利が守られ、安全、安心な環境で適切なケアが提供できる一時保護体制の充実に向け、取り組んでまいります。  〔鎌田聡君登壇〕 ◆(鎌田聡君) 児童相談所の判断、今答弁ありましたけれども、児童相談所の判断、対応によって、子供の命にも関わる問題にもつながります。だからこそ、その判断、対応についての第三者評価は極めて重要だと思いますし、子供の意見を酌み取る意見表明支援員の存在も重要です。いずれの取組も進めていくとの答弁ですので、よろしくお願いをいたします。 八代児童相談所管内の一時保護所の設置については、あまり積極性を感じられないお答えでございました。 依然として高い水準にある児童虐待によって、一時保護所が満杯となって、養護施設や里親宅に一時保護を委託されても、保護された子供と入所者や里親との関係性などから、お互いにとって不安を抱えることにもなります。 子供が安心、安全に守られる場所が一時保護所です。緊急に保護された児童がいつでも職員に相談でき、職員は日常の生活に着目した支援や心理的ケアができてこそ、次のステップに向けた方向性が出せると思います。 開放型施設の充実を進めることよりも、まずは必要な場所に公的な一時保護所を設置することを喫緊の課題として捉えていただき、御対応いただきますことを重ねてお願いしまして、次の質問に移ります。 夜間中学についてです。 県教育委員会は、夜間中学を再来年4月に県立湧心館高校の敷地内に開校することを決めて、現在準備を進めています。 そこで、県内初の夜間中学開校に当たって、よりよい夜間中学にするために検討していただきたい事項について、3点質問をいたします。 まずは、設置場所である湧心館高校との調整についてです。 湧心館高校には、全日制に加えて、定時制、通信制課程があります。夜間中学は、湧心館高校の敷地内に校舎が設置される予定となっていますが、施設利用など、湧心館高校の教育活動に支障がない教育課程となるように施設整備等も準備を進めていただきたいと考えます。 また、安易に、湧心館高校と兼務で管理職や教職員の配置をしないように対応をしていただきたいと思います。 次に、入学対象者ですが、入学対象者は、熊本県在住の15歳以上で、義務教育を終了していない方や卒業しても不登校等の理由で十分に学ぶことができなかった方とされていますが、今年春に開校した香川県の三豊市立高瀬中学校夜間学級では、不登校特例校の指定を受けて、学齢期の不登校生徒を受け入れています。 そこで、本県の夜間中学でも、中学1年から3年までの学齢の不登校生徒を受け入れることはできないのか、お尋ねをいたします。 3点目に、1学年の人数についてです。 本県の夜間中学は、1学年の人数を20人程度とされていますが、夜間中学は、年齢や国籍が様々な生徒が同じ教室で学ぶことになり、このような多様な生徒を教えるには、教員の負担も大きく、20人をさらに分割する必要があるのではないかと考えます。 1学年20人程度の根拠は何なのか、分割することは考えられないのか、お尋ねをいたします。 以上、夜間中学に関する3点の質問について、教育長にお尋ねをいたします。  〔教育長白石伸一君登壇〕 ◎教育長(白石伸一君) まず、1点目の湧心館高校との調整についてお答えいたします。 夜間中学の施設利用については、熊本地震の際に使用した南阿蘇村の木造応急仮設住宅の資材を再利用して新たに建設する校舎で授業の大部分を行う予定です。その上で、理科や体育などの一部の授業は、湧心館高校の施設を使用することになりますが、湧心館高校の教育活動に支障が生じないよう調整することとしています。 一方で、文化祭等の学校行事を湧心館高校定時制と夜間中学が合同で行うことにより、高校生との交流を通して、双方にとって新たな学びの意欲につながることも考えられます。 今後、湧心館高校内に設置した強みを最大限生かし、効果的な教育課程となるよう努めてまいります。 あわせて、管理職や教職員の配置についても、教育効果が高まるよう、先進校の事例を参考にしながら、個別の支援を行う学習支援員の配置やボランティアの活用も含めて検討してまいります。 2点目の学齢期の不登校生徒の受入れについてお答えします。 現在、不登校生徒の支援につきましては、県内各中学校の取組はもとより、各市町村教育委員会において、教育支援センターが設置され、個々の生徒に応じた支援が行われています。 県教育委員会としても、教育支援センターの設置に向けて支援等を行うなど、不登校生徒の学習環境の充実に取り組んでいます。 夜間中学の受入れ対象者については、学校、市町村教育委員会の意見及び先進的な取組を行っている他県の情報を収集するなどして、研究を深めてまいります。 3点目の1学年の人数を20人程度とした点についてお答えします。 この20人程度とは、多様な学びを必要とする方々への細やかな教育を提供するに当たり、通常学級の半数程度の人数を想定していることや、既に設置されている夜間中学の定員や入学者数の状況を踏まえて設定したものです。 議員御指摘のとおり、夜間中学に入学される方々は、その背景に様々な状況があることが想定されます。入学に際しては、お一人お一人との面談を予定しており、実際の授業においては、その状況やニーズ等も踏まえた上で、学習内容に応じて個別指導やグループに分けた指導を取り入れるなど、効果的な学びの体制づくりに取り組んでまいります。 今後とも、誰一人取り残さないという理念の下、熊本市教育委員会と連携し、外部有識者会議等を踏まえながら、学びたいと思われる方が学んでよかったと思われる夜間中学を目指して準備を進めてまいります。  〔鎌田聡君登壇〕 ◆(鎌田聡君) 県内初の夜間中学ですので、ぜひ御検討をよろしくお願いしたいと思います。 それでは、最後の質問に行きます。 熊本県の最低賃金は、10月1日から過去最大の上げ幅となる32円引き上げられて、時給853円になりました。改定後の最低賃金は、パートや学生アルバイトなどの雇用形態にかかわらず、熊本県内で働く全ての労働者に適用され、およそ4万人が賃上げの対象になると見られています。 一方で、最低賃金を引き上げますと、中小企業の経営に大きな影響を与えることになりますので、厚生労働省は、賃金引上げと設備投資などを行った企業に対して、業務改善助成金を拡充するなどの支援を強化しています。 ただ、それだけでは、現下の物価高、資材高騰などによって厳しい経営環境に置かれている中小企業にとっては不十分ですので、その業務改善助成金に複数の県が県独自の上乗せをしております。 そこで質問ですが、熊本県も賃上げに取り組む中小企業に対しての支援を拡充できないものでしょうか。商工労働部長にお尋ねをいたします。 ○議長(溝口幸治君) 商工労働部長三輪孝之君。――残り時間が少なくなりましたので、答弁を簡潔に願います。  〔商工労働部長三輪孝之君登壇〕 ◎商工労働部長(三輪孝之君) 10月から最低賃金が引き上げられ、議員御指摘のとおり、価格への転嫁が難しい中小企業者等の経営環境は、ますます厳しくなっていると認識しています。 そのような状況を踏まえ、苦境にある事業者の経営改善、労働者の賃上げ促進のためには、まず、適切に価格転嫁を行い、適正な利益を得られるような環境整備を行うことが必要不可欠と考えています。 具体的には、補正予算により、中小企業診断士などの専門家派遣や価格転嫁への理解を求める広報等に要する経費を補助する事業を9月から実施しております。 なお、議員御指摘の業務改善助成金への県独自の上乗せについてでございますが、現在、大分県など全国で数県が取り組んでいます。 今回の国の経済対策において、事業再構築、生産性向上等と一体的に賃金の引上げを行う中小企業等への支援を大幅に拡充するとされており、本県においては、現時点では上乗せを実施する予定はございません。 県としましても、国の施策の動向を注視しながら、商工団体との連携を密にし、厳しい経営環境に置かれた中小企業者、小規模事業者の方々をしっかりと支えてまいります。  〔鎌田聡君登壇〕 ◆(鎌田聡君) 商工労働部長、慌てさせまして、大変申し訳ございませんでした。 県独自の上乗せはやらないということで、残念な答弁でございましたけれども、ぜひ御検討いただきたいと思います。 私も、今回で41回目の質問となりました。まだまだやり足りない部分がたくさんございますので、また引き続き、県民目線での議論を行ってまいりたいと思いますので、どうか引き続きまして、また御指導いただきますようにお願いを申し上げ、そして最後になりますけれども、質問を御清聴いただきましたことに改めて感謝を申し上げまして、私の質問を閉じさせていただきたいと思います。 ありがとうございました。(拍手) ○議長(溝口幸治君) 以上で本日の一般質問は終了いたしました。 明10日及び11日は、県の休日のため、休会でありますので、次の会議は、来る12日午前10時から開きます。 日程は、議席に配付の議事日程第4号のとおりといたします。 本日は、これをもって散会いたします。  午後3時19分散会...